精霊馬とは?お盆に供えるナスとキュウリの作り方、飾り方、処分方法

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お盆の季節が近づくと、ご先祖様をお迎えする準備を始めたくなりますね。食卓でおなじみのナスとキュウリでつくる「精霊馬」ですが、その意味や正しい飾り方をご存知ですか。この記事では、精霊馬に込められた想いから、簡単な作り方、飾る時期や向き、お盆の後の丁寧な処分方法まで、気になるすべてが分かります。ご先祖様に早く会いたい、少しでも長く一緒に過ごしたいという願いを込めた大切な風習。その意味を知り、心を込めてお迎えする準備を始めましょう。

目次

1. 精霊馬とは お盆にご先祖様の霊を迎える乗り物のこと

夏の訪れとともに思い出す、お盆の季節。ご実家に帰省されたり、ご家族で集まったりする方も多いのではないでしょうか。そんなお盆の時期に、仏壇や盆棚に飾られるキュウリやナスで作った動物のお飾り、それが「精霊馬(しょうりょううま)」です。

精霊馬は、お盆にあの世からこの世へ帰ってこられるご先祖様の霊が、移動に使われる乗り物とされています。ご先祖様が長旅で疲れることのないように、また、道に迷うことがないようにという、家族の温かいおもてなしの心が形になった、日本の美しい風習のひとつですね。

一般的に、キュウリは馬に、ナスは牛に見立てて作られます。馬は「精霊馬」、牛は「精霊牛(しょうりょううし)」と呼ばれ、それぞれに大切な役割と意味が込められているのですよ。

1.1 ナスとキュウリで作る理由

数ある野菜の中で、なぜナスとキュウリが選ばれたのでしょうか。これには、昔ながらの暮らしの知恵が関係しています。

一番の理由は、お盆の時期にたくさん収穫できる夏野菜で、手に入りやすかったからだといわれています。かつてはどの家庭の畑でも採れた、とても身近な野菜だったのですね。また、キュウリのすらりとした形が馬に、ナスのゆったりとした形が牛にそっくりで、見立てやすかったことも理由のひとつでしょう。ご先祖様をお迎えする大切なお飾りを、身近なもので心を込めて手作りする、という習慣が根付いていったようです。

1.2 精霊馬に込められた意味 ご先祖様への想い

キュウリの馬とナスの牛、この二つの乗り物には、それぞれ対照的でありながら、ご先祖様を深く想う家族の願いが込められています。その意味を知ると、精霊馬がより一層愛おしく感じられるかもしれません。

お迎えする時とお送りする時で、ご先祖様に乗っていただく乗り物が違うのです。

乗り物野菜込められた想い
精霊馬(行き)キュウリ「一刻も早く、我が家へ帰ってきてください」という、再会を待ちわびる気持ちを表しています。足の速い馬に乗って、少しでも早く会いに来てほしいという願いが込められています。
精霊牛(帰り)ナス「お帰りは、どうぞゆっくりと、名残を惜しみながら」という、別れを惜しむ気持ちを表しています。歩みの遅い牛の背中に、この世からのお土産をたくさん積んで、景色を楽しみながらゆっくりと帰ってほしいという願いが込められています。

行きは早く、帰りはゆっくりと。短いお盆の期間を、少しでも長く一緒に過ごしたいという、ご先祖様への深い愛情が感じられる、素敵な風習ですね。

2. 精霊馬はいつ飾る?お盆の期間と飾るタイミング

心を込めて作った精霊馬。ご先祖様をお迎えするために、いつから飾ればよいのか気になりますよね。精霊馬を飾るタイミングは、お盆の始まりである「迎え盆」と、終わりである「送り盆」に関係しています。ここでは、一般的なお盆の期間に沿って、飾る日と片付ける日を丁寧にご紹介しますね。

2.1 飾り始める日 迎え盆

精霊馬は、お盆の初日である13日の午前中に飾るのが一般的です。この13日のことを「迎え盆(むかえぼん)」や「盆の入り」と呼び、ご先祖様の霊が家に帰ってこられる日とされています。

ご先祖様が、あの世から長い道のりを帰ってこられる際に、乗り物がないと大変ですよね。そのため、お盆が始まる日の朝には精霊馬をお供えして、いつでもお乗りいただけるように準備を整えておくのです。玄関や盆棚に精霊馬を飾って、ご先祖様を温かい気持ちでお迎えしましょう。

2.2 片付ける日 送り盆

ご先祖様と過ごしたお盆も、やがて終わりの日を迎えます。精霊馬を片付けるのは、お盆の最終日である16日の「送り盆(おくりぼん)」の日です。送り盆は、ご先祖様の霊をふたたびあの世へお見送りする大切な日です。

16日の夕方に行われる「送り火」が終わった後や、ご先祖様が帰られる時間を見計らって片付けるのが良いとされています。最後までご先祖様への感謝の気持ちを込めて、お見送りをしてから片付けるようにしましょう。

2.3 地域によって異なるお盆の時期

「お盆」とひとことで言っても、実は地域によってその時期が異なります。これは、明治時代に行われた改暦(新暦の採用)が影響しているためです。ご自身がお住まいの地域や、ご実家の慣習がどれにあたるのか、一度確認しておくと安心ですね。

主に、次の3つの期間にお盆が行われています。

名称時期主な地域
新盆(しんぼん・にいぼん)7月13日~7月16日東京都、神奈川県・静岡県・石川県の一部など
月遅れの盆(つきおくれのぼん)8月13日~8月16日全国の多くの地域(最も一般的)
旧盆(きゅうぼん)旧暦の7月13日~7月15日 or 16日沖縄県、南西諸島など

一番一般的なのは、8月に行われる「月遅れの盆」ですが、都市部では7月の「新盆」も珍しくありません。また、沖縄地方などでは、今でも旧暦に合わせてお盆を行うため、毎年日付が変わります。精霊馬を飾る際は、まずご自身の地域やご家庭のお盆がいつなのかを確認することが大切ですよ。

3. 精霊馬の作り方 初心者でも簡単な手順を紹介

お盆にご先祖様をお迎えする、ナスとキュウリの「精霊馬」。心を込めて手作りしてみませんか?一見すると少し難しそうに感じるかもしれませんが、実はとても簡単に作ることができるんですよ。不器用だからと心配なさらないでくださいね。ここでは、どなたでも安心して作れるように、準備するものから手順、きれいに仕上げるコツまで、一つひとつ丁寧にご紹介します。ご先祖様を想いながら、和やかな気持ちで準備を進めていきましょう。

3.1 準備する材料

精霊馬づくりに必要な材料は、どれも身近なお店で手軽に揃えられるものばかりです。お盆の時期になると、スーパーマーケットなどで「お盆用品セット」として販売されていることもありますよ。

材料ポイント・選び方
野菜(ナスとキュウリ)馬に見立てるキュウリは、少し曲がっているものを選ぶと、走っているような躍動感が出ます。牛に見立てるナスは、どっしりと安定感のある、太くて形の良いものを選びましょう。
足(割り箸やおがら)足には、割り箸や、皮を剥いだ麻の茎である「おがら」を使います。おがらは仏具店やお盆用品を扱うお店で購入できます。なければ、つまようじや竹串、折ったマッチ棒などでも代用できますよ。
道具野菜に足を差し込むための穴をあける、竹串やキリなどがあると便利です。

3.2 キュウリの馬(精霊馬)の作り方

まずは、足の速い馬から作っていきましょう。これは、ご先祖様の霊が少しでも早く家に戻ってこられるように、という願いを込めたものです。「お帰りなさい」の気持ちを込めて、丁寧に作ってみてくださいね。

手順1:足を準備する
割り箸を4等分になるように折ります。同じ長さになるように揃えておくと、安定しやすくなりますよ。おがらを使う場合も、同じ長さに切り揃えてください。

手順2:キュウリに穴をあける
キュウリのヘタ側を頭に見立てて、足を取り付ける位置に竹串やキリで4か所、穴をあけます。馬が前に進んでいるように見せるため、少し斜めに穴をあけるのがポイントです。

手順3:足を差し込む
あけた穴に、準備しておいた足をしっかりと差し込みます。4本の足でしっかりと自立するか確認し、ぐらつくようであれば足の長さや差し込む角度を調整しましょう。これで、凛々しいキュウリの馬の完成です。

3.3 ナスの牛(精霊牛)の作り方

次に、ゆったりと歩く牛を作ります。こちらは、お盆を一緒に過ごしたご先祖様が、お供え物をたくさん積んで、景色を楽しみながらゆっくりとあの世へお帰りになれるように、という想いが込められています。「また来年、お待ちしていますね」と、感謝の気持ちを伝えながら作りましょう。

手順1:足を準備する
馬と同様に、割り箸やおがらで4本の足を用意します。

手順2:ナスに穴をあける
ナスのヘタを尻尾に見立て、足を取り付ける4か所に穴をあけます。どっしりとした牛の姿をイメージしながら、安定する位置を探してみてください。

手順3:足を差し込む
穴に足を差し込み、安定して立つか確認します。ナスはキュウリよりも重さがあるので、少し太めの足を使うと安定しやすいですよ。これで、頼もしいナスの牛ができました。

3.4 上手に作るためのコツと注意点

せっかく作るのですから、愛嬌のある素敵な精霊馬に仕上げたいものですね。ちょっとしたコツで、仕上がりがぐっと良くなります。安全に作るための注意点とあわせて、ぜひ参考にしてください。

野菜は新鮮で形の良いものを選びましょう。まっすぐな野菜を使うと安定感が出ますし、少し自然なカーブがあるものを選ぶと、生き生きとした表情が生まれます。どちらが良いということはありませんので、お好みのものを選んでくださいね。

足を差し込む穴は、きつすぎず、ゆるすぎない大きさに調整するのがコツです。穴が小さいと野菜が割れてしまうことがあり、大きいと足が抜けてしまいます。竹串などで少しずつ穴を広げながら、ちょうど良い塩梅を探ってみてください。

馬には手綱、牛には鼻輪として、そうめんや水引を取り付けると、より本格的で愛らしい姿になります。耳としてトウモロコシの粒や南天の葉を飾るのも素敵ですよ。

刃物や先の尖った道具をお使いになる際は、くれぐれも怪我にご注意ください。特にお子様やお孫さんと一緒に作る時間はとても楽しいものですが、道具を使う場面では、大人がそばで見守り、手を添えてあげると安心です。

また、精霊馬は生ものであるため、時間が経つと傷んでしまいます。お盆の期間中に飾っておけるよう、迎え盆の直前に作るのがおすすめです。

4. 精霊馬の飾り方と正しい向き

心を込めて作った精霊馬、ご先祖様が迷わず、そして心地よく過ごせるように飾りたいものですね。実は、精霊馬には飾る場所や向きに大切な意味が込められています。ここでは、ご先祖様を敬う気持ちが伝わる飾り方の基本をご紹介します。

4.1 精霊馬を飾る場所

精霊馬は、ご先祖様をお迎えする「精霊棚(しょうりょうだな)」や「盆棚(ぼんだな)」にお供えするのが一般的です。精霊棚とは、お盆の時期に設ける特別な祭壇のこと。仏壇がある場合は、その前や横に設置します。

もし、ご自宅に仏壇がなかったり、精霊棚を設けるスペースがなかったりする場合でも、どうぞご安心ください。リビングのサイドボードや小ぶりなテーブルの上など、家族が集まる清らかな場所を選んで、そこを小さな精霊棚に見立ててお飾りすれば、ご先祖様への想いはきっと届きます。玄関に飾って、ご先祖様を華やかにお迎えするのも素敵ですね。

4.2 ご先祖様を迎える時と送る時で変わる向き

精霊馬の向きは、お盆の「迎え盆」と「送り盆」で変えるのが習わしです。これは、ご先祖様が迷わず家にたどり着き、そしてお帰りの際には無事にあの世へ戻れるようにという、私たち子孫のやさしい願いが込められているんですよ。

4.2.1 迎え盆の向き 内向きに飾る

お盆の始まりである「迎え盆」(8月13日など)では、精霊馬の頭を家の中(仏壇や精霊棚のある方向)に向けて飾ります。これは、「ご先祖様が、足の速いキュウリの馬に乗って、一刻も早く我が家へ帰ってきてくださいますように」という願いの表れです。ナスの牛も同様に、家の中に向けてお供えします。

4.2.2 送り盆の向き 外向きに飾る

お盆の終わりである「送り盆」(8月16日など)が近づいたら、今度は精霊馬の向きを外(玄関のある方向)に向けます。これは、「お帰りの際は、お供え物をたくさん積んだ足の遅いナスの牛に乗って、この世の名残を惜しみながら、どうぞお気をつけてゆっくりお帰りください」という、感謝といたわりの気持ちが込められています。キュウリの馬も同じく外向きに揃えましょう。

この向きの変更は、ご先祖様への細やかな心遣い。時期と向き、そしてそこに込められた意味を一覧表にまとめましたので、参考にしてみてくださいね。

時期精霊馬・精霊牛の向き込められた想い
迎え盆(13日頃)頭を家の中(内向き)に向ける馬に乗って、早くお家に帰ってきてくださいね
送り盆(16日頃)頭を家の外(外向き)に向ける牛に乗って、ゆっくりあの世にお帰りくださいね

このように、向きひとつにもご先祖様を大切に思う深い意味が隠されています。お盆の期間中は、この向きを意識して、感謝の気持ちとともにお飾りしてみてください。

5. お盆が終わった後の精霊馬の処分方法

お盆にご先祖様の送り迎えという大役を果たしてくれた精霊馬。お盆が終わった後、「どうやって片付けたらいいのかしら?」と迷われる方もいらっしゃるかもしれませんね。ご先祖様への感謝の気持ちを込めて、最後まで丁寧に送り出してあげましょう。ここでは、精霊馬の主な処分方法と、気をつけたい点についてご紹介します。

5.1 基本は塩で清めて白い紙に包む

どのような方法で処分するにしても、まず行いたいのが塩でのお清めです。これは、ご先祖様の霊が宿っていたとされる精霊馬を、元の野菜や藁(わら)に戻すための大切な儀式。感謝の気持ちを伝えながら、丁寧に扱いましょう。

手順はとても簡単です。

  1. 精霊馬に「ありがとうございました」と心の中で感謝を伝えます。
  2. ひとつまみの塩を振りかけて清めます。
  3. 清めた精霊馬を、半紙や白いキッチンペーパーなど、きれいな白い紙で包みます。

このひと手間を加えることで、気持ちよくお見送りできますし、その後の処分も丁寧に行えます。この作法は、次に紹介する「土に還す」「可燃ゴミとして処分する」どちらの場合でも、基本となります。

5.2 土に還す方法

昔ながらの方法として、精霊馬を土に還すというやり方があります。自然からいただいたものを自然に返すという、とても理にかなった方法ですね。もしご自宅にお庭がある場合は、この方法を検討してみてはいかがでしょうか。

ただし、いくつか注意点があります。必ず、ご自身の所有地(ご自宅の庭など)の土に埋めるようにしてください。公園や近所の空き地、山林などに勝手に埋めることは、不法投棄にあたってしまいます。動物が掘り返さないよう、少し深めに穴を掘って埋めてあげると安心です。

5.3 可燃ゴミとして処分する場合の注意点

マンションにお住まいの方や、お庭がないご家庭も多いことでしょう。その場合は、可燃ゴミとして処分するのが最も現実的で一般的な方法です。「ゴミとして捨てるのは、なんだか申し訳ない…」と感じるかもしれませんが、心配いりません。大切なのは、ご先祖様を敬い、感謝する気持ちです。

可燃ゴミとして出す際も、基本の作法である「塩で清めて白い紙に包む」という手順を踏むことで、気持ちがずいぶんと変わります。他の生ゴミとは別の小さな袋に入れてから指定のゴミ袋に入れるなど、少しだけ配慮してあげると、より丁寧に供養できるでしょう。何よりも、お住まいの自治体が定めるゴミの分別ルールをきちんと守ることが大切です。

5.4 やってはいけない処分方法

感謝を込めてお見送りするはずが、マナー違反や法律違反になってしまっては本末転倒です。特に、昔の慣習をそのまま現代で行うと問題になることがありますので、以下の方法は避けるようにしましょう。

やってはいけない処分方法理由
川や海に流すかつては行われていた地域もありますが、現代では河川や海を汚染する原因となり、法律(廃棄物の処理及び清掃に関する法律など)で禁止されています。絶対にやめましょう。
公園や山、他人の土地に埋める・捨てるご自身の所有地以外に捨てることは、不法投棄という犯罪行為にあたります。景観を損ねるだけでなく、衛生上の問題にもつながります。

これらのルールは、私たち自身と、私たちが暮らす環境を守るためにあります。ご先祖様も、きっとそのことを理解してくださるはずです。正しい知識を持って、心を込めて精霊馬をお見送りしましょう。
(参考:e-Gov法令検索 廃棄物の処理及び清掃に関する法律

6. 精霊馬に関するよくある質問

お盆の準備をしていると、「これで合っているかしら?」と、ふと疑問に思うこともありますよね。ご先祖様を気持ちよくお迎えするために、ここでは精霊馬にまつわるよくある質問にお答えします。

6.1 精霊馬は必ず作らないといけない?

精霊馬は、必ず作らなければいけない、という決まりはありません。最も大切なのは、ご先祖様をお迎えし、おもてなししたいという感謝の気持ちです。お仕事が忙しかったり、お野菜の用意が難しかったりと、ご家庭の事情はさまざま。無理のない範囲で、心を込めてご準備されるのが一番です。

もし精霊馬をご用意しない場合でも、お花やお好きだった食べ物などをお供えして、手を合わせるだけで、その想いはきっとご先祖様に届きますよ。

6.2 作れない場合は市販のセットを購入しても良い

もちろん、市販のものを活用するのも素敵な選択です。最近では、スーパーマーケットや仏具店、インターネット通販などで、さまざまな種類の精霊馬が販売されています。

お野菜を模したプラスチック製のものから、毎年飾れるちりめん細工の可愛らしいもの、火を灯すとご先祖様へのメッセージが浮かび上がるろうそく型まで、たくさんの種類があります。ご自身の暮らしや好みに合わせて、しっくりくるものを選んでみてはいかがでしょうか。

手作りでも市販のものでも、ご先祖様を思う心に変わりはありません。便利なものを上手に取り入れて、心穏やかにお盆をお過ごしくださいね。

6.3 宗派や地域による違いについて

精霊馬の風習は、実は宗派や地域によって少しずつ違いがあります。ご自身の地域の慣習や、ご家庭の宗派の考え方を知っておくと、より安心してお盆を迎えられますね。

6.3.1 浄土真宗では飾らないのが基本

仏教の中でも、浄土真宗では精霊馬を飾らないのが一般的です。これは、浄土真宗の教えでは、亡くなった方は阿弥陀如来のお力によってすぐに極楽浄土へ往生されると考えられているためです。そのため、お盆にご先祖様の霊が家に帰ってくる、という考え方をしないのです。

ただし、お住まいの地域に根付いた習慣として、浄土真宗の門徒の方でも精霊馬を飾るご家庭もあります。もしご自身の家のやり方がわからない場合は、お付き合いのあるお寺(菩提寺)や、ご親族に確認するのが一番安心です

6.3.2 地域によってもさまざまな風習が

日本は広いので、地域によってもユニークな風習が見られます。代表的な違いをいくつかご紹介します。

地域・習慣特徴
北海道・東北地方の一部夏野菜が手に入りにくかった歴史から、藁(わら)や真菰(まこも)で精霊馬を作ることがあります。
関西地方精霊馬を飾る習慣があまり見られない地域もあります。代わりに「水の子」として、洗ったお米とさいの目に切ったナスやキュウリを蓮の葉などに乗せてお供えします。
馬だけ、牛だけを飾る「お帰りはゆっくりで大丈夫ですよ」という想いを込めて牛だけを飾ったり、逆に馬だけを飾ったりする地域やご家庭もあります。
使う野菜の違いナスやキュウリの代わりに、みょうがを馬に見立てたり、ほおずきを提灯として飾ったりする風習もあります。

このように、お盆の風習は一つではありません。ご自身の故郷のやり方を大切にされたり、ご家族で話し合って新しい形を取り入れたりするのも、素敵な供養の形かもしれませんね。

7. まとめ

この記事では、お盆にご先祖様をお迎えする精霊馬について、その意味から作り方、処分の仕方まで詳しくご紹介しました。足の速いキュウリの馬には「早く帰ってきてほしい」、歩みの遅いナスの牛には「ゆっくりお帰りください」という、ご先祖様を大切に想う心が込められています。必ずしも用意しなければならないものではありませんが、心を込めて手作りする時間は、故人を偲ぶ穏やかなひとときとなるでしょう。ご自身の暮らしに合わせて、できる形で取り入れてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

ハレノヒ編集部は、「わたしらしく、身軽に暮らす」をテーマに、日々の暮らしを前向きに楽しむためのヒントをお届けしています。
美容や健康、趣味、暮らしの工夫など、50代以降の女性を中心に、誰もが自分らしく輝けるような情報をやさしい目線で発信しています。
ちょっと気になる話題や、ふと心に残る言葉も添えて、皆さまの毎日が少し晴れやかになりますように。

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