涅槃会とは?いつ、何をする行事?意味や由来を解説

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お釈迦様の命日である2月15日に行われる「涅槃会(ねはんえ)」。言葉は知っていても、いつ、何をする行事なのか、詳しくは知らない方も多いのではないでしょうか。この記事では、涅槃会とはお釈迦様の入滅を偲ぶ大切な仏教行事であることを基本に、その意味や由来、涅槃図や涅槃だんごといった習わしまで、やさしく紐解いていきます。行事の心を知ることで、日々の暮らしに新たな発見があるかもしれません。

目次

1. 涅槃会とはお釈迦様の入滅を偲ぶ仏教行事

「涅槃会(ねはんえ)」という言葉、耳にしたことはありますでしょうか。少し厳かな響きに、少し難しい行事のように感じられるかもしれませんね。ですが、これは仏教にとって、そして私たちの心にとっても、とても大切な意味を持つ一日なのです。

涅槃会とは、ひと言でいうと仏教の開祖であるお釈迦様が亡くなられた日(ご命日)に、その遺徳を偲んで行われる法要のことです。お釈迦様がこの世を去られたことを、仏教では「入滅(にゅうめつ)」と呼びます。涅槃会は、お釈迦様の入滅を悼み、私たちに残してくださった尊い教えに改めて感謝するための日なのです。

大切な方を偲ぶ気持ちと、その方が残してくれた温かい思い出に感謝する気持ち。涅槃会は、私たちが抱くそうした心とどこか通じるものがあるのかもしれません。そのため、ただ悲しみにくれる日というわけではなく、お釈迦様が到達された、すべての苦悩から解放された安らかな境地「涅槃」に思いを馳せる、穏やかで心静かな一日とされています。

お釈迦様が伝えたかったこと、そして「涅槃」が意味するもの。そうしたことにそっと心を寄せることで、慌ただしい毎日の中に、ふと心安らぐ時間を見つけられるかもしれませんね。

2. 涅槃会はいつ?日付は2月15日

お釈迦様が亡くなられた日を偲ぶ涅槃会は、毎年2月15日に行われるのが基本です。この日付は、お釈迦様がまさにこの日に「入滅(にゅうめつ)」されたことに由来しています。多くの宗派でこの日に法要が営まれ、仏教徒にとって大切な一日とされています。

毎年同じ日付なので覚えやすいですが、実は地域やお寺によっては、少し時期がずれることもあるのですよ。

2.1 旧暦と新暦で時期が異なる場合も

「涅槃会は2月15日」と聞いて、「でも、うちの近所のお寺では3月に行われているような…?」と感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。その通り、涅槃会は地域によって3月15日に行われることがあります。

これは、昔使われていた「旧暦」と、私たちが今使っている「新暦」との関係によるものです。お釈迦様が入滅されたのは、もともと「旧暦の2月15日」。これを新暦にそのまま当てはめて2月15日に行うお寺が最も多いのですが、旧暦の日付を新暦の日付に単純に置き換える「月遅れ」で、3月15日に行うところもあるのです。

現在では新暦の2月15日に行うのが一般的ですが、地域によっては月遅れの3月15日に行われることもあります。特に、まだ寒さの厳しい雪国などでは、少し暖かくなった3月に行うことが多いようです。どちらの日付も、お釈迦様を敬う心に変わりはありません。

日付主な特徴
新暦 2月15日現在、全国の多くの寺院で採用されている最も一般的な日付です。
月遅れ 3月15日旧暦の日付を新暦に置き換えたもので、一部の地域や寺院で行われます。
旧暦 2月15日涅槃会の本来の日付です。現在ではこの暦通りに行うことは稀ですが、沖縄など一部地域では旧暦の行事が今も大切にされています。

もしお近くのお寺の涅槃会に参加してみたいとお考えでしたら、事前にホームページなどで日程を確認してみると安心ですね。

3. 涅槃会の由来と意味

毎年2月15日に行われる涅槃会。この行事がなぜ大切に受け継がれてきたのか、その背景にある由来と、「涅槃」という言葉が持つ深い意味を、そっと紐解いていきましょう。お釈迦様の生涯の終わりに触れることで、日々の暮らしの中で忘れがちな、心の安らぎについて考えるきっかけになるかもしれませんね。

3.1 お釈迦様の最期「入滅」が由来

涅槃会の由来は、仏教を開かれたお釈迦様(釈尊、ブッダ)が、その長い旅路を終えられた日にあります。今から2500年以上も昔のこと、80歳になられたお釈迦様は、自らの死期が近いことを悟られました。

そして、現在のインドのクシナガラという地で、沙羅双樹(さらそうじゅ)という2本対になった木の下に身を横たえ、集まった弟子たちに最後の説法をされたのです。その教えは「自らを灯明とし、法を灯明とせよ(自灯明・法灯明)」という、他者に依存するのではなく、自分自身と仏の教えを拠り所として生きていきなさい、というものでした。

お釈迦様が静かに息を引き取られると、弟子たちだけでなく、鳥や獣、虫に至るまで、あらゆる生き物がその死を嘆き悲しんだと伝えられています。この、お釈迦様が亡くなられたことを仏教では「入滅(にゅうめつ)」と呼びます。涅槃会は、このお釈迦様の入滅を偲び、その教えに改めて感謝を捧げるための大切な日なのです。

3.2 「涅槃」が意味するものとは

では、「涅槃(ねはん)」という言葉には、どのような意味が込められているのでしょうか。もともとは古代インドの言葉であるサンスクリット語の「ニルヴァーナ」を音写したもので、「吹き消すこと」を意味します。

これは、ロウソクの火を吹き消すように、私たちの心を乱す欲望や怒り、ねたみといった「煩悩(ぼんのう)」の火が完全に消え去った状態を指しています。仏教では、この煩悩こそが苦しみの原因であると考えられており、涅槃はすべての苦しみから解放された、穏やかで安らかな究極の境地、仏教が目指す最終的な目標とされています。

涅槃には、お釈迦様の状態に応じて二つの種類があると考えられています。

涅槃の種類意味
有余依涅槃(うよえねはん)お釈迦様が35歳で悟りを開かれてから、亡くなるまでの状態。煩悩は消えているが、肉体(依りどころ)はまだこの世に残っている涅槃。
無余依涅槃(むよえねはん)お釈迦様が80歳で亡くなられた後の状態。肉体も滅び、苦しみの原因となるものが一切無くなった完全な涅槃。輪廻転生(りんねてんしょう)のサイクルからも解脱した境地。

涅槃会で偲ぶのは、お釈迦様が「無余依涅槃」に入られたことです。それは単なる「死」ではなく、すべての役割を終えて完全な安らぎの世界へ旅立たれた、祝福すべき出来事とも捉えられているのですよ。

4. 涅槃会では何をする?代表的な儀式や習わし

お釈迦様を偲ぶ大切な日、涅槃会。この日、お寺ではどのような儀式や習わしが行われるのでしょうか。宗派やお寺、地域によって違いはありますが、ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。静かに祈りを捧げるだけでなく、少し変わった名前の食べ物もあったりするのですよ。

4.1 涅槃図を掲げる

涅槃会の法要では、本堂に「涅槃図(ねはんず)」と呼ばれる大きな掛け軸が掲げられます。これは、お釈迦様が入滅されたときの、悲しみに満ちた情景を描いた仏画です。参列者はこの涅槃図を前に、お釈迦様の偉大な徳を偲び、その教えに改めて感謝の気持ちを捧げます。年に一度、この日にしか見られない貴重な涅槃図を公開するお寺も多く、その荘厳な絵を一目見ようとたくさんの方が訪れます。

4.1.1 涅槃図に描かれているもの

涅槃図には、お釈迦様の最期の様子が細やかに描かれています。中央に横たわるお釈迦様を囲むように、さまざまな登場人物や動物たちがそれぞれの悲しみを表現しており、一枚の絵の中に深い物語が込められています。

描かれている対象その意味や様子
お釈迦様沙羅双樹(さらそうじゅ)の木の下で、頭を北に、顔を西に向け、右脇を下にして静かに横たわっています。安らかに息を引き取られた「入滅」の姿です。
弟子や菩薩、神々お釈迦様の周りで、弟子や菩薩、帝釈天(たいしゃくてん)や梵天(ぼんてん)といった神々が、深い悲しみに暮れています。
動物や虫たち象や虎、牛、鳥、さらには虫に至るまで、あらゆる生きとし生けるものが、お釈迦様の死を嘆き悲しんで集まっています。仏教の教えが、人間だけでなくすべての命に向けられていることを象徴しています。
沙羅双樹と摩耶夫人お釈迦様を囲む沙羅双樹の木は、悲しみのあまり白く枯れてしまったと伝えられています。また、絵の右上には、亡き母である摩耶夫人(まやぶにん)が、我が子の最期を見届けるために天から駆けつける様子が描かれています。

ちなみに、涅槃図には猫が描かれていない、という話を耳にしたことはありませんか?お釈迦様のもとに駆けつける途中、ネズミを追いかけて遅れてしまったから、など諸説ありますが、中には猫が描かれている涅槃図も存在し、絵解きをしながら眺めるのも興味深い時間です。

4.2 遺教経を読む

涅槃会の法要では、「遺教経(ゆいきょうぎょう)」というお経が読まれます。これは、正式には「仏垂般涅槃略説教誡経(ぶっすいはつねはんりゃくせつきょうかいきょう)」といい、お釈迦様が亡くなる直前に、弟子たちへ遺した最後の教えがまとめられたものです。
「私が亡き後は、私ではなく自らを、そして私が説いた教えを拠り所にしなさい」「怠ることなく、教えの道を精進しなさい」といった言葉が綴られており、参列者はお釈迦様の最後の言葉に静かに耳を傾け、その教えを自らの生き方と重ね合わせながら、心を新たにします。

4.3 花供御や涅槃だんごをいただく

涅槃会ならではの習わしとして、特別なお供え物をいただいたり、食べたりする風習が各地に残っています。見た目も可愛らしく、いただくとご利益があるともいわれているのですよ。

4.3.1 涅槃だんご(だんごまき)とは

「涅槃だんご」は、米粉などで作られた赤、白、黄、緑、黒(または紫)の五色の小さなお団子です。これは、お釈迦様の遺骨である「仏舎利(ぶっしゃり)」に見立てられています。法要の後、このお団子をいただくことで、一年間の無病息災のご利益があると信じられています。
お寺によっては、法要の後に参拝者に向かってお団子を撒く「だんごまき」が行われることも。集まった人々が福を授かろうと賑わう、活気のある行事です。

4.3.2 花供御(はなくそ)とは

「花供御」と書いて「はなくそ」と読む、少し驚くような名前のお菓子もあります。これは、炒ったお米や豆、あられなどで作られたもので、地域によっては涅槃会に欠かせないお供え物です。
名前の由来は、「花のように美しいお供え物」を意味する「花供御(はなくご)」が訛ったという説や、お釈迦様を荼毘(だび)に付した際の灰や、釜の焦げに見立てたという説など様々。こちらもいただくと病気にならない、厄除けになるといった言い伝えがあり、親しまれています。

5. 涅槃会と三大仏事(三仏会)

今回ご紹介している涅槃会は、実は仏教においてとても大切な三つの行事「三大仏事(さんだいぶつじ)」、または「三仏会(さんぶつえ)」の一つに数えられているのですよ。

三大仏事とは、お釈迦様の生涯における特に重要な三つの出来事を記念して行われる法要のこと。私たちにとっての誕生日や結婚式、お葬式のように、お釈迦様の人生の大きな節目を偲び、感謝する大切な日々なのです。具体的には、次の三つの行事を指します。

名称日付お釈迦様の出来事
灌仏会(かんぶつえ)4月8日お生まれになった日(誕生日)
成道会(じょうどうえ)12月8日悟りを開かれた日
涅槃会(ねはんえ)2月15日お亡くなりになった日(入滅)

このように、お釈迦様の「誕生」「悟り」「入滅」という三つの大きな出来事を、それぞれの記念日に行う法要が三大仏事です。一つずつ、どのような行事なのか見ていきましょうね。

5.1 灌仏会(かんぶつえ)お釈迦様の誕生日

灌仏会は、4月8日のお釈迦様のお誕生日をお祝いする行事です。私たちには「花まつり」という名前の方が馴染み深いかもしれませんね。春の訪れとともに、なんだか心も華やぐような行事です。

この日、お寺ではたくさんの花で飾られた小さなお堂「花御堂(はなみどう)」が作られます。その中には、右手で天を、左手で地を指したお釈迦様の誕生時のお姿をあらわした「誕生仏」が置かれます。そして、参拝者はこの誕生仏に甘茶をかけてお祝いするのが習わしです。これは、お釈迦様がお生まれになったとき、天から甘露(かんろ)の雨が降り注いだという言い伝えに由来しているのですよ。

5.2 成道会(じょうどうえ)お釈迦様の悟りの日

成道会は、12月8日にお釈迦様が悟りを開かれたことを記念する行事です。「成道」とは、仏道を成就して悟りを開くことを意味します。お釈迦様は長い苦行の末、菩提樹の木の下で瞑想に入り、ついにこの日、宇宙の真理に目覚められたとされています。

この日には、お釈迦様の悟りを追体験するように、静かに自分と向き合う行事が行われることが多いです。特に禅宗のお寺では、「臘八摂心(ろうはつせっしん)」と呼ばれる、12月1日から8日の朝まで昼夜を問わず座禅を続ける厳しい修行が行われます。一般の方向けに、座禅会や法話会などを開くお寺もありますので、心を落ち着けたいときに参加してみるのも良いかもしれませんね。

これら三大仏事について、全日本仏教会のウェブサイトでも紹介されています。より詳しく知りたい方は、そちらも参考にしてみてくださいね。
仏教三大行事|公益財団法人 全日本仏教会

6. 涅槃会には一般の人も参加できる?

お寺で行われる大切な行事と聞くと、少し敷居が高く感じられるかもしれませんね。「涅槃会は、檀家さんや関係者だけが参加するものなのかしら?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

ご安心ください。涅槃会は、仏教の教えに心を寄せる人なら誰でも参加できる、開かれた行事であることがほとんどです。お釈迦様が亡くなったことを偲び、その教えに感謝する日ですから、宗派を問わず多くの寺院で一般の方の参加を歓迎しています。

ただし、法要の規模や内容はお寺によってさまざまです。中には、参加に事前申し込みが必要な場合や、特定の時間帯のみ公開される場合もあります。訪れる前にお寺の公式サイトなどで情報を確認しておくと、当日慌てることなく、心静かにお参りできますよ。服装は、普段着で問題ありませんが、お釈迦様への敬意を表す場ですので、あまり派手ではない落ち着いた色合いのものを選ぶとよいでしょう。

6.1 有名な涅槃会が行われるお寺の例

東福寺

せっかくなら、歴史あるお寺で営まれる涅槃会に足を運んでみるのも素敵な体験です。特に大きな「涅槃図」が公開されることで知られるお寺は、毎年多くの方が訪れます。ここでは、一般の方も参加しやすい有名な涅槃会が行われるお寺をいくつかご紹介しますね。

お寺場所涅槃会の特徴
東福寺京都府京都市室町時代の画僧・明兆(みんちょう)が描いた、縦約12m、横約6mにもなる日本最大級の涅槃図が有名です。その迫力は圧巻で、一見の価値があります。
泉涌寺(せんにゅうじ)京都府京都市皇室の菩提寺である「御寺(みてら)」として知られています。こちらも明兆作と伝わる大きな涅槃図(縦約16m、横約8m)が公開され、荘厳な雰囲気の中で法要が営まれます。
四天王寺大阪府大阪市聖徳太子が建立した日本仏法最初の官寺です。伝統ある法要が執り行われ、多くの参拝者で賑わいます。涅槃図も拝観できます。
高幡不動尊金剛寺東京都日野市関東三大不動の一つとして親しまれています。室町時代に描かれた重要文化財の「絹本著色不動二童子像及連座図(通称:丈六不動)」とともに、同じく重要文化財の「涅槃図」がご開帳されます。

※法要の日程や公開期間は年によって変更されることがあります。お出かけの際は、必ず各寺院の東福寺公式サイト泉涌寺公式サイトなどで最新の情報をご確認ください。

もちろん、これらのお寺以外にも、皆さんのご近所のお寺で涅槃会が行われているかもしれません。静かな時間の中でお釈迦様の教えにそっと心を寄せ、自分自身と向き合うひとときを過ごしてみるのも、日々の暮らしに新たな彩りを添えてくれるのではないでしょうか。

7. まとめ

今回は、お釈迦様が亡くなられた日を偲ぶ仏教行事「涅槃会」についてご紹介しました。毎年2月15日に行われ、涅槃図を掲げたり、涅槃だんごをいただいたりします。「涅槃」が意味するのは、一切の煩悩から解放された安らかな境地のこと。日々を懸命に生きる私たちにとっても、心に留めておきたい言葉ですね。一般の方も参加できるお寺はたくさんありますので、この機会に足を運び、心静かにお釈迦様の教えに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

ハレノヒ編集部は、「わたしらしく、身軽に暮らす」をテーマに、日々の暮らしを前向きに楽しむためのヒントをお届けしています。
美容や健康、趣味、暮らしの工夫など、50代以降の女性を中心に、誰もが自分らしく輝けるような情報をやさしい目線で発信しています。
ちょっと気になる話題や、ふと心に残る言葉も添えて、皆さまの毎日が少し晴れやかになりますように。

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