「夏越の祓」とは？行事や食べ物、東京の神社を紹介

6月30日に行われる「夏越の祓」。由来から、茅の輪くぐりの正しい作法、行事食「水無月」のいわれを解説します。半年間の罪や穢れを清め、残り半年を無病息災で過ごすための大切な神事です。東京で参加できる有名な神社もご紹介します。

1. 夏越の祓とは 1年の半分を無事に過ごせた感謝と残り半年の無病息災を願う神事

あっという間に1年の半分が過ぎ、梅雨明けが待ち遠しいですね。この時期になると、多くの神社で「夏越の祓（なごしのはらえ）」という神事が行われます。

夏越の祓とは、1月1日から6月までの半年間の罪や穢れ（けがれ）を祓い清め、残り半年の無病息災を願う大切な神事です。知らず知らずのうちに心や体に溜まってしまった疲れや厄をリセットし、清々しい気持ちで夏を迎えるための、古くから伝わる日本の美しい習慣です。

新しい気持ちで、健やかな毎日を送るためのきっかけにしてみませんか。

1.1 夏越の祓はいつ？毎年6月30日に行われます

夏越の祓は、原則として毎年6月30日に行われます。ちょうど1年の折り返し地点にあたる日ですね。

ただし、神社によっては多くの人が参加しやすいように、6月の最終日曜日や、6月中旬から7月上旬にかけて行事を執り行う場合もあります。お近くの神社の情報を確認してからお出かけになるのがおすすめです。

1.2 夏越の祓の由来と目的 罪や穢れを祓い清める

夏越の祓の歴史はとても古く、その起源は日本神話にまでさかのぼるといわれています。古事記に記されている、伊弉諾尊（いざなぎのみこと）が黄泉の国（よみのくに）の穢れを清めるために行った「禊祓（みそぎはらえ）」が始まりとされています。

昔から、人々は日常生活の中で知らず知らずのうちに罪を犯したり、穢れに触れたりすると考えられてきました。ここでの「罪」とは法律上の罪だけでなく、過ちや不調和な心の状態を指し、「穢れ」とは気が枯れた状態、つまり心身の活力が失われた状態を意味します。

夏越の祓は、こうした心身の不調や災いの元となる罪や穢れを祓い、清らかな本来の姿に立ち返ることを目的としています。特に、病気が流行りやすい夏を元気に乗り越えるための大切な儀式だったのですね。

1.3 「大祓」との違いは？夏越の祓と年越の祓

「夏越の祓」と似た言葉に「大祓（おおはらえ）」があります。実は、夏越の祓は「大祓」という大きな儀式の一つなのです。

大祓は年に2回行われ、6月30日に行われるものが「夏越の祓（なごしのはらえ）」、12月31日に行われるものが「年越の祓（としこしのはらえ）」と呼ばれます。どちらも人々を罪や穢れから清めるための重要な神事ですが、時期と目的が少し異なります。違いを下の表にまとめてみました。

名称	時期	主な目的
夏越の祓（なごしのはらえ）	6月30日	残り半年の無病息災を祈願する（特に夏の疫病除け）
年越の祓（としこしのはらえ）	12月31日	清らかな心身で新年を迎える準備をする

このように、大祓は私たちの暮らしの節目に、心身をリセットするための大切な機会となっています。より詳しい情報については、神社本庁のウェブサイトも参考にしてみてくださいね。

2. 夏越の祓の行事内容 具体的に何をする？

一年の折り返し地点である6月30日に行われる「夏越の祓」。この神事では、私たちの心身に知らず知らずのうちに溜まった罪や穢れ（けがれ）を祓い清めるための、古くからの習わしがあります。代表的な行事は「茅の輪（ちのわ）くぐり」と「人形（ひとがた）」の二つです。どちらも、清々しい気持ちで夏を迎え、残り半年を健やかに過ごすための大切な儀式。ここでは、それぞれの意味や作法について、一つひとつ丁寧にご紹介しますね。

2.1 茅の輪くぐりの意味と正しい作法

夏越の祓と聞いて、神社の鳥居の下などに置かれた大きな緑の輪を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。あれが「茅の輪」です。茅（ちがや）という生命力の強いイネ科の植物で編まれており、この輪をくぐることで、疫病や災いから身を守り、心身を清めることができると信じられてきました。

この茅の輪くぐりの由来は、日本神話に登場する素戔嗚尊（すさのおのみこと）の伝説にさかのぼります。旅の途中で宿を求めた素戔嗚尊を、貧しいながらも温かくもてなした蘇民将来（そみんしょうらい）という人物がいました。素戔嗚尊は大変喜び、そのお礼に「今後、疫病が流行った際には、茅で輪を作り腰につければ災厄から逃れられるだろう」と教えたそうです。この教えが、茅の輪をくぐって無病息災を願う「茅の輪くぐり」の起源になったといわれています。

茅の輪のくぐり方には、古くからの作法があります。一般的には、数字の「8」の字を描くように、三度くぐるのが正式な作法とされています。神社によって多少の違いはありますが、基本的な作法を覚えておくと、より一層心を込めてお参りができますよ。

手順	回り方	ポイント
1回目	まず輪の前で一礼し、左足からまたいで、輪の左側を回ります。	正面に戻ってきたら、再度一礼します。
2回目	次に右足からまたいで、輪の右側を回ります。	正面に戻ってきたら、また一礼します。
3回目	もう一度左足からまたいで、輪の左側を回ります。	正面に戻ってきたら、最後にもう一度深く一礼します。
最後	そのまままっすぐ進み、ご神前へお参りします。

2.1.1 茅の輪をくぐる時の唱え詞

茅の輪をくぐる際には、定められた「唱え詞（となえことば）」を心の中で唱えながら回ると、より丁寧です。代表的な唱え詞は、古くから伝わる和歌です。

「水無月（みなづき）の 夏越（なごし）の祓（はらえ）する人（ひと）は 千歳（ちとせ）の命（いのち） 延（の）ぶというなり」

この歌は「6月に行われる夏越の祓えをする人は、千年も寿命が延びるといわれていますよ」という意味が込められています。この言葉を思い浮かべながら、ゆっくりと輪をくぐってみてください。もし唱え詞を忘れてしまっても、残り半年の無病息災を願う清らかな気持ちでくぐることが何よりも大切ですので、ご安心くださいね。

2.2 人形（ひとがた）に罪穢れを移す方法

茅の輪くぐりと並んで行われるのが、「人形（ひとがた）」を用いたお祓いです。「形代（かたしろ）」とも呼ばれるこの人形は、私たちの身代わりとなって罪や穢れを引き受けてくれるものです。多くの神社では、6月になると授与所などでこの人形をいただけます（初穂料が必要な場合もあります）。

人形を使ったお祓いの方法は、とてもシンプルです。

1. まず、人の形に切り抜かれた白い紙（人形）に、自分の名前と年齢（数え年）を書きます。
2. 次に、その人形で、頭から足先まで、身体の気になるところや調子の悪い部分を優しく撫でます。
3. 最後に、人形に自分の息を三度、そっと吹きかけます。こうすることで、自分の罪や穢れ、災厄などが人形に移るとされています。
4. 罪穢れを移した人形は、神社に設置された専用の箱に納めます。納められた人形は、後日神社でお焚き上げされたり、川へ流されたりして、私たちの身代わりとして清めていただけます。

ご家族の分もまとめて行ったり、遠方で直接神社へ行けない方のために郵送で受け付けてくれる神社もあったりします。ご自身の状況に合わせて、この古式ゆかしい神事に参加してみてはいかがでしょうか。半年間の厄をすっきりと落とし、晴れやかな気持ちで夏本番を迎えたいものですね。

3. 夏越の祓で食べられる代表的な和菓子「水無月」

夏越の祓の時期になると、和菓子屋さんの店先に並ぶ特別な和菓子があるのをご存知でしょうか。それが、京都発祥の「水無月（みなづき）」です。見た目も涼やかで、この時期ならではの風情を感じさせてくれるお菓子ですよ。残り半年の健康を願いながら、季節の和菓子をいただくのも素敵な習慣ですね。

3.1 水無月とはどんなお菓子？

水無月は、白いういろう生地の上に、甘く煮た小豆をのせて蒸しあげた和菓子です。ひんやりとした口当たりともちもちとした食感が特徴で、暑い夏にぴったりの一品です。

このシンプルなお菓子には、一つひとつの形や素材に、古くからの人々の願いが込められています。

部分	意味・由来
三角形の形	宮中で夏バテ防止に食べられていた貴重な「氷室（ひむろ）の氷」のかけらを表現しています。氷をかたどったお菓子を食べることで、暑い夏を乗り切ろうという願いが込められています。
上にのった小豆	小豆の赤い色には魔除けや厄払いの力があると信じられてきました。お菓子の上に小豆を散らすことで、邪気を祓う意味合いを持たせています。

3.2 なぜ水無月を食べるの？その由来

水無月を食べる習慣は、室町時代の京都で始まったといわれています。当時、宮中では旧暦6月1日に「氷の節句」という行事がありました。冬の間にできた氷を「氷室」と呼ばれる場所で大切に保管し、夏になると取り出して食べて暑気払いをしていたのです。

しかし、当時の氷は大変な貴重品で、庶民が口にすることはできませんでした。そこで、庶民は手に入らない氷の代わりに、氷に似せたお菓子を作って食べることで、夏の無病息災を願ったのです。それが「水無月」のはじまりです。

この風習が、ちょうど同じ時期に行われる神事「夏越の祓」と結びつき、6月30日に水無月を食べて残り半年の健康を祈願する習慣として、特に京都を中心に広まっていきました。今では全国の和菓子屋さんでも見かけるようになり、私たちも気軽に季節の味として楽しめるようになりました。

夏越の祓で神社にお参りした帰りに、家族で水無月をいただく。そんな風に、季節の行事と食文化を一緒に楽しんでみるのはいかがでしょうか。

4. 【エリア別】夏越の祓が行われる東京の有名な神社5選

年の節目に行われる「夏越の祓」。せっかくなら、由緒ある神社で清々しい気持ちを味わいたいものですよね。ここでは、都内にありながら豊かな自然や歴史を感じられる、夏越の祓におすすめの神社を5つご紹介します。お散歩がてら、足を運んでみてはいかがでしょうか。

4.1 明治神宮（渋谷区）

都心にいることを忘れてしまうほど、緑豊かな鎮守の杜に包まれた明治神宮。広大な敷地をゆっくりと歩くだけで、心が洗われるような清々しい気持ちになれます。毎年6月30日には、拝殿前に設けられた大きな茅の輪をくぐる「大祓」が執り行われ、多くの人々が訪れます。清らかな空気に満ちた静かな杜で、心静かに半年を振り返り、新たな半年に向けて英気を養うのにぴったりの場所です。

項目	内容
茅の輪設置期間	例年6月下旬から6月30日まで（詳細は公式サイトをご確認ください）
大祓式	6月30日 午後3時より
特徴	人形（ひとがた）は、神符授与所にて受けることができます。初穂料を納め、名前と年齢を書いて息を吹きかけ、身体を撫でて納めます。
アクセス	JR「原宿駅」西口よりすぐ / 東京メトロ千代田線・副都心線「明治神宮前〈原宿〉駅」2番出口よりすぐ
公式サイト	明治神宮 公式サイト

4.2 東京大神宮（千代田区）

「東京のお伊勢さま」として親しまれ、縁結びのご利益で知られる東京大神宮。良縁を願う多くの女性でいつも賑わっています。こちらでも夏越の祓式と茅の輪くぐりが行われます。残り半年の無病息災とともに、素敵なご縁を結んでいただけるようお願いするのも良いかもしれませんね。飯田橋駅から歩いてすぐというアクセスの良さも嬉しいポイントです。

項目	内容
茅の輪設置期間	例年6月中旬から6月30日まで（詳細は公式サイトをご確認ください）
大祓式	6月30日 午後4時より
特徴	茅の輪は、期間中いつでも自由にくぐることができます。人形は授与所にて頒布されており、郵送での申し込みも可能です。
アクセス	JR「飯田橋駅」西口より徒歩5分 / 東京メトロ有楽町線・南北線「飯田橋駅」B2a出口より徒歩5分
公式サイト	東京大神宮 公式サイト

4.3 神田明神（千代田区）

商売繁盛や勝負運のご利益で名高い、江戸の総鎮守・神田明神。朱色が美しい社殿は、活気と歴史の重みを感じさせます。こちらでは、6月30日に「夏越の大祓」が斎行されます。境内には茅の輪が設置され、多くの参拝者が訪れて半年間の罪穢れを祓います。お仕事や家庭のことなど、日々の暮らし全般の安泰を願うのにふさわしい神社です。

項目	内容
茅の輪設置期間	例年6月中旬頃から6月30日まで（詳細は公式サイトをご確認ください）
大祓式	6月30日 午後3時より
特徴	人形は、社務所にて受けることができます。茅の輪は日中であればいつでもくぐることが可能です。
アクセス	JR「御茶ノ水駅」聖橋口より徒歩5分 / 東京メトロ丸ノ内線「御茶ノ水駅」1番出口より徒歩5分
公式サイト	神田明神 公式サイト

4.4 日枝神社（千代田区）

日本の政治の中心地、永田町に鎮座する日枝神社。徳川将軍家から篤い崇敬を受けた格式高い神社です。こちらでは、6月30日に「夏越の大祓式」が行われます。例年、茅の輪の設置期間が比較的長めに設けられているのが特徴です。ご自身の都合の良い日にちを選んで、ゆっくりお参りできるのが嬉しいですね。山の上にある神社ですが、エスカレーターが設置されており、楽に参拝できます。

項目	内容
茅の輪設置期間	例年6月中旬から7月上旬頃まで（詳細は公式サイトをご確認ください）
大祓式	6月30日 午後3時より
特徴	人形は社頭で頒布されるほか、公式サイトからダウンロードして郵送で納めることもできます。
アクセス	東京メトロ千代田線「赤坂駅」出口2より徒歩3分 / 東京メトロ南北線・銀座線「溜池山王駅」出口7より徒歩3分
公式サイト	日枝神社 公式サイト

4.5 富岡八幡宮（江東区）

「深川の八幡様」として親しまれ、江戸最大の八幡宮として知られる富岡八幡宮。江戸三大祭りの一つ「深川八幡祭り」でも有名です。こちらでも6月30日に「大祓式」が執り行われ、境内には大きな茅の輪が設けられます。下町の活気を感じながら、力強く罪穢れを祓い、元気に夏を乗り切りたい方におすすめです。

項目	内容
茅の輪設置期間	例年6月下旬から6月30日まで（詳細は公式サイトをご確認ください）
大祓式	6月30日 午後5時より
特徴	人形は社務所にて受けることができます。大祓式は夕方から行われるため、日中お忙しい方でも参加しやすいかもしれません。
アクセス	東京メトロ東西線「門前仲町駅」1番出口より徒歩3分 / 都営地下鉄大江戸線「門前仲町駅」5番出口より徒歩6分
公式サイト	富岡八幡宮 公式サイト

5. 夏越の祓に関するよくある質問

一年の節目となる「夏越の祓」。いざ神社へお参りしようと思うと、「どんな服装で行けばいいの？」「何か準備するものはあるかしら？」など、ちょっとした疑問が浮かぶこともありますよね。ここでは、そんな夏越の祓にまつわる素朴な疑問に、一つひとつ丁寧にお答えします。安心してお参りできるよう、事前に確認しておきましょう。

5.1 参加するときの服装は？

夏越の祓に参加する際の服装に、厳しい決まりはありません。基本的には普段着で大丈夫ですよ。

ただし、神様にご挨拶をする神聖な儀式ですので、敬意を払った清潔感のある服装を心がけると、より気持ちよくお参りができるでしょう。Tシャツやジーンズのようなカジュアルな服装でも問題ありませんが、肌の露出が多いタンクトップやショートパンツ、かかとが固定されないサンダルなどは避けたほうが安心です。

もしご祈祷を受ける場合は、少しきれいめなワンピースやブラウス、ジャケットを羽織るなど、セミフォーマルな装いを意識するとより丁寧な印象になります。厳しい暑さの時期ですので、無理のない範囲で、神様への敬意を忘れずに服装を選んでみてくださいね。

5.2 初穂料は必要？相場はいくら？

「初穂料（はつほりょう）」とは、神様にお供えするお金のことです。夏越の祓で茅の輪をくぐるだけであれば、初穂料は特に必要ない場合がほとんどです。お賽銭を用意しておけば十分でしょう。

ただし、以下のような場合は初穂料が必要になります。

• 人形（ひとがた）を納めるとき
• 社殿に上がってご祈祷を受けるとき

初穂料の金額は神社によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

内容	初穂料の目安
人形（ひとがた）を納める	300円～1,000円程度（お気持ちで）
大祓式への参列やご祈祷	3,000円～10,000円程度

詳しい金額は、各神社の公式サイトやお知らせをご確認ください。初穂料を納める際は、白い封筒か、のし袋（紅白の蝶結びの水引）に入れるのが丁寧な作法です。表書きは「初穂料」または「御初穂料」とし、その下に自分の名前を書きましょう。

5.3 御朱印はもらえる？

はい、夏越の祓の時期限定の特別な御朱印を授与している神社はたくさんあります。

この時期だけの御朱印は、茅の輪や水無月（みなづき）の印が押されていたり、涼しげな青や緑の色が使われていたりと、とても素敵なものが多いのが特徴です。御朱印を集めている方にとっては、大きな楽しみの一つですね。

限定御朱印は人気が高く、書き置き（あらかじめ紙に書かれたもの）のみの授与となる場合や、授与期間が限られていることもあります。また、大祓式当日は混雑が予想されるため、御朱印の受付時間が変更になる可能性も。お目当ての御朱印がある方は、事前に神社の公式サイトやSNSなどで、授与期間や受付時間、初穂料などを確認してからお出かけになることをおすすめします。

6. まとめ

今回は、一年の折り返し地点で行われる「夏越の祓」についてご紹介しました。知らず知らずのうちに溜まった心身の罪や穢れを祓い、残り半年の無病息災を願う、古くから伝わる大切な神事なのですね。茅の輪をくぐり、人形（ひとがた）に願いを託し、季節の和菓子「水無月」をいただく。こうした丁寧な習わしは、私たちの暮らしに清々しい節目を与えてくれます。お近くの神社へ足を運び、新たな気持ちで健やかな夏を迎えてみませんか。