秋の散歩道で目を引く彼岸花ですが、「毒がある」と聞いて触っても大丈夫か心配になりますね。この記事では、彼岸花の毒の正体や致死量、お子様やペットがいる場合の注意点などを詳しく解説します。実は、毒は主に球根にあり、素手で触るだけなら基本的に安全です。毒があるのになぜ田んぼの畦道に植えられているのか、その理由もわかります。正しい知識で、安心して美しい彼岸花の季節を楽しみましょう。
1. 彼岸花には毒があるという話は本当?
秋のお彼岸が近づくと、田んぼのあぜ道や土手で、まるで赤い絨毯のように咲き誇る彼岸花。その燃えるような赤色は、日本の秋の風景に欠かせない美しさですよね。思わず足を止めて見入ってしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、この美しい彼岸花について、「毒があるから触ってはいけない」といった話を耳にしたことはありませんか?実は、その話は本当で、彼岸花は全体に毒を持っています。
でも、必要以上に怖がることはありませんよ。毒の正体や、どの部分に特に注意が必要なのかをきちんと知っておけば、これからも安心して彼岸花の美しさを楽しむことができます。ここでは、彼岸花の毒について、やさしく解説していきますね。

1.1 彼岸花の毒の正体はリコリンというアルカロイド
彼岸花の毒の主な成分は、「リコリン」というアルカロイドの一種です。アルカロイドと聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、植物が自分たちの身を守るために作り出す天然の化学物質のことです。彼岸花の他にも、スイセンやスズランなど、私たちの身近な植物にも含まれています。
彼岸花にはリコリンの他にも、ガランタミンなど複数のアルカロイドが含まれており、これらの成分が合わさって毒性を発揮します。動物に食べられないようにするための、植物が持つ知恵とも言えるかもしれませんね。
1.2 毒は花や茎よりも球根(鱗茎)に最も多く含まれる
彼岸花は花、葉、茎、そして土の中にある球根(鱗茎)のすべてに毒が含まれています。その中でも、毒の成分であるリコリンが最も多く含まれているのは球根の部分です。

部位ごとの毒の含有量の違いを、分かりやすく表にまとめてみました。
部位 | 毒の含有量(目安) |
---|---|
球根(鱗茎) | 特に多い |
花 | 比較的少ない |
葉・茎 | 比較的少ない |
このように、美しい花やスラリと伸びた茎にも毒はありますが、特に注意したいのは球根です。ご自宅のお庭などで彼岸花を育てる際に球根を扱うときには、少し気をつけておくと安心ですね。
2. 彼岸花の毒は触るだけでも危険なのか
秋の散歩道で、燃えるような赤い彼岸花を見かけると、思わず足を止めて見入ってしまいますよね。その美しい姿とは裏腹に「毒がある」と聞くと、うっかり触れてしまっても大丈夫かしら?と、少し心配になるお気持ち、よくわかります。特に、お孫さんとのお散歩中などでは、気になるところでしょう。
結論からお伝えしますと、彼岸花は花や茎に軽く触れる程度であれば、毒の影響を受けることはほとんどありません。どうぞご安心くださいね。

2.1 基本的に素手で触っても問題はない
彼岸花の毒は、主に球根(鱗茎)に多く含まれており、皮膚から吸収されるような強い毒性はありません。ですから、道端に咲いている彼岸花を観賞したり、写真に収めたりする際に、花びらや葉が偶然手に触れたとしても、何も心配することはないのですよ。
美しいからといって、公園や他人の敷地に咲いている花を摘むのはいけませんが、ご自身のお庭に咲いたものを少し切って飾る、といった場合でも、過度に怖がる必要はありません。ただし、注意していただきたい点もございます。
2.2 ただし茎から出る汁が皮膚に付くと炎症を起こす可能性も
注意したいのは、彼岸花の茎を折ったり切ったりしたときに出てくる、少し粘り気のある透明な汁です。この液体には毒の成分であるアルカロイドが含まれており、皮膚が弱い方やアレルギー体質の方が触れると、かぶれや水ぶくれといった皮膚炎を起こすことがあります。
厚生労働省のウェブサイトでも、彼岸花の汁に触れることによる皮膚炎のリスクが指摘されています。お庭の手入れなどで彼岸花を扱う際には、念のため手袋をするとより安心ですね。もし汁が皮膚についてしまったら、慌てずに石鹸を使って流水で丁寧に洗い流しましょう。
彼岸花との付き合い方を、状況別に分かりやすく表にまとめてみました。
状況 | 起こりうる症状 | 対処法 |
---|---|---|
花や葉に軽く触れる | 特に心配ありません | 特に必要ありません |
茎を折って出た汁に触れる | 皮膚のかぶれ・赤み・水ぶくれなど(接触皮膚炎) | すぐに石鹸と流水でよく洗い流してください |
汁が付いた手で目や口をこする | 目に入ると結膜炎などの炎症を起こす可能性があります | すぐに大量の水で洗い流し、違和感が残る場合は専門医に相談しましょう |
このように、彼岸花は触ること自体を怖がる必要はありませんが、茎から出る「汁」には少しだけ注意を払う、ということを覚えておくと良いでしょう。美しい秋の花を、心穏やかに楽しみたいですものね。
3. 彼岸花の毒による中毒症状と致死量
秋の散歩道でふと目にする彼岸花。その美しい姿とは裏腹に、毒があるという話を聞くと、もし誤って口にしてしまったらどうなるのか、少し心配になりますよね。ここでは、彼岸花の毒による症状や、どのくらい危険なのかについて、詳しく見ていきましょう。正しい知識があれば、もっと安心して彼岸花の美しさを楽しめますよ。
3.1 もし食べてしまった場合に起こる症状(嘔吐・下痢など)
彼岸花の毒の主成分であるリコリンは、体内に入ると主に消化器系に影響を与えます。もし誤って食べてしまうと、食後30分ほどで次のような症状が現れることがあります。
症状の種類 | 具体的な症状 |
---|---|
主な中毒症状 | 吐き気、嘔吐、激しい下痢、腹痛、よだれが多くなる(流涎) |
重篤な場合の症状 | 中枢神経の麻痺、痙攣、呼吸困難、血圧低下 |
多くの場合、嘔吐や下痢といった症状で体外に毒が排出されるため、重篤な状態に至ることは稀です。しかし、摂取した量やその人の体質によっては、神経麻痺など危険な症状を引き起こす可能性もゼロではありません。特に球根には毒が多く含まれているため、絶対に口にしないようにしましょう。
3.2 人間における彼岸花の毒の致死量とは
「致死量」と聞くと、少し怖い言葉に感じられるかもしれませんね。ですが、万が一のときのために、知識として知っておくと安心です。
彼岸花の毒成分であるリコリンの人間における致死量は、経口摂取で10g程度といわれています。ただし、これはあくまで純粋なリコリンという成分の量です。彼岸花の球根ひとつにどのくらいのリコリンが含まれているかは、大きさや時期によって変わるため、「球根を何個食べたら危険」と一概に言うことはできません。
厚生労働省のウェブサイト「食中毒の原因(細菌以外)」のページでも、ヒガンバナは有毒植物として紹介されており、その危険性が広く知られています。
大切なのは、たとえ少量であっても、食べれば体に害を及ぼす危険な植物であると認識しておくことです。致死量に至らなくても、つらい中毒症状に苦しむことになりますから、「少しだけなら大丈夫だろう」という油断は禁物ですよ。
4. 子供やペット(犬・猫)がいる場合の注意点
秋風が心地よい季節になると、散歩道や田んぼのあぜ道で燃えるように咲く彼岸花の姿に、思わず足が止まりますよね。その美しい姿は私たちの心を和ませてくれますが、もし小さなお子様や可愛らしいペットと一緒にお暮らしなら、少しだけ注意が必要です。
ここでは、大切なご家族を守るために知っておきたい、彼岸花との上手な付き合い方についてお話ししますね。

4.1 お子様が誤って口にしないための対策
好奇心いっぱいのお子様は、目に映るものすべてが遊び道具。特に、鮮やかな赤い色をした彼岸花は、興味を引くことでしょう。きれいな花に手を伸ばし、万が一にも口に入れてしまうことがないように、いくつか対策をしておくと安心です。
お散歩の途中などで彼岸花を見つけたら、「きれいなお花だね。でも、このお花には毒があるから、触らないで見て楽しもうね」と、お子様の目線に合わせて優しく教えてあげることが大切です。なぜ触ってはいけないのか、理由をきちんと話してあげることで、お子様も納得しやすくなります。
また、ご自宅のお庭に彼岸花が咲いている場合は、お子様が遊ぶスペースから離れた場所に植えたり、低い柵を設けたりするのも良い方法です。何よりも、お子様から目を離さないことが一番の対策になりますね。
4.2 犬や猫が彼岸花の毒を摂取した場合の危険性
大切な家族の一員である犬や猫にとっても、彼岸花の毒は大変危険です。お散歩が好きなワンちゃんや、お外に出るネコちゃんがいるご家庭では、特に注意してあげましょう。
犬や猫が彼岸花の、特に毒が多く含まれる球根(鱗茎)を誤って食べてしまうと、次のような中毒症状を引き起こす可能性があります。環境省が注意喚起している情報も参考に、どのような症状があるか見てみましょう。
主な中毒症状 | 特に注意が必要なこと |
---|---|
よだれを大量に出す、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など | 彼岸花の球根(鱗茎)は毒の成分が最も多く、大変危険です。ワンちゃんが地面を掘り返して球根を食べてしまわないよう、特に注意が必要です。症状が重い場合には、神経麻痺などを起こし、命に関わることもあります。 |
元気がなくなる、食欲がなくなる、ふらつきなど |
お散歩の際には、彼岸花が群生している場所ではリードを少し短めに持ち、拾い食いをしないように気を付けてあげてください。もし、ペットが彼岸花を食べてしまったかもしれないと気づいたら、自己判断で吐かせようとはせず、すぐにかかりつけの動物病院に連絡し、指示を仰ぎましょう。その際、「いつ、何を、どのくらい食べたか」を伝えられると、診察がスムーズに進みますよ。
5. 毒があるのになぜ?田んぼの畦道に彼岸花が植えられている理由
秋になると、田んぼの畦道(あぜみち)やお墓の周りで、燃えるように咲き誇る彼岸花。その美しい姿とは裏腹に、毒があるというお話を聞いて、少し怖いような、不思議な気持ちになりますよね。どうしてそんな植物が、私たちの暮らしのすぐそばに植えられているのでしょうか。実はそこには、昔の人々の暮らしを守るための、深い知恵が隠されていたのです。
5.1 モグラやネズミから大切な作物を守るため
彼岸花が田んぼの畦道や畑の土手に沿って植えられている一番の理由は、モグラやネズミといった動物から、お米や野菜などの作物を守るためだといわれています。彼岸花の球根(鱗茎:りんけい)には「リコリン」という強い毒が含まれており、これを嫌って動物たちが近寄らなくなるのです。
モグラやネズミは、田んぼの畦に穴を掘ってしまいます。すると、その穴から水が漏れてしまい、稲の生育に欠かせない水が溜まらなくなってしまいます。また、畑の作物の根を食べてしまうことも。そんな厄介な動物たちを遠ざけるために、昔の人々は「天然の忌避剤(きひざい)」として、彼岸花を植えたのですね。
5.2 土葬されたご遺体を動物から守るため
お墓の周りで彼岸花をよく見かけるのも、その毒が理由です。昔は今のように火葬が一般的ではなく、土葬が主流でした。そのため、土に埋葬されたご遺体を、野犬やキツネなどの動物が掘り返してしまわないように、お墓の周りに毒のある彼岸花を植えたといわれています。
「死人花(しびとばな)」や「地獄花(じごくばな)」といった少し怖い別名で呼ばれることがあるのも、こうした背景が関係しているのかもしれません。大切なご先祖様を静かに守るという、大切な役割を担っていたのですね。
5.3 飢饉の際の非常食として
これは少し意外に思われるかもしれませんが、彼岸花は飢饉(ききん)が起こった際の非常食としての役割も持っていました。「毒があるのにどうして?」と思いますよね。実は、彼岸花の毒であるリコリンは水に溶けやすい性質を持っています。
そのため、球根をすり潰し、何度も何度も水にさらして毒を完全に洗い流すことで、でんぷん質の多い部分を食べることができたのです。もちろん、これは食べるものが何もないときの最終手段。先人たちは、いざという時のために彼岸花を植え、その知識を語り継いできたのです。
5.3.1 【重要】ご家庭での毒抜きは絶対にやめましょう
昔の人々が非常食にしていたという話がありますが、これは専門的な知識と大変な手間があって初めて可能になることです。毒抜きが不完全なものを口にすると、命に関わる深刻な中毒症状を引き起こします。興味本位で試すことは絶対にやめてください。
彼岸花の持つ役割を、表で分かりやすく整理してみましょう。
植えられている場所 | 主な目的・理由 |
---|---|
田んぼの畦道・畑の周り | 毒を嫌うモグラやネズミを遠ざけ、作物を守るため。 |
お墓の周り | 土葬されたご遺体を、動物が掘り返すのを防ぐため。 |
(昔の人里) | 飢饉の際に、毒抜きをして食べるための非常食として。 |
このように、彼岸花はその毒性さえも巧みに利用して、人々の暮らしを陰ながら支えてきた大切な植物だったのです。次に彼岸花を見かけたときは、その美しい姿の奥にある、先人たちの知恵や歴史に思いを馳せてみるのも素敵ですね。
6. 万が一彼岸花の毒を摂取してしまった場合の対処法
美しい彼岸花ですが、もしもご自身や大切なご家族、ペットが誤って口にしてしまったら…と考えると、心配になりますよね。万が一の事態に備えて、落ち着いて行動できるよう、正しい対処法を知っておきましょう。
6.1 落ち着いて、まずは状況を確認しましょう
まず一番大切なのは、慌てずに状況を把握することです。パニックにならず、以下の点を確認してみてください。
- 誰が:大人ですか?それともお子様やペットでしょうか。
- いつ:いつ頃、口にした可能性がありますか。
- どの部分を:花、葉、茎、それとも球根(根っこの部分)でしょうか。
- どのくらいの量を:ひとかけら程度か、もっとたくさん食べてしまったか。
- 現在の様子は:吐き気や腹痛など、何か変わった様子はありますか。
これらの情報が、専門家へ相談する際にとても役立ちます。わかる範囲で構いませんので、メモしておくと安心です。
6.2 人間が誤って口にしてしまった場合の応急処置
6.2.1 すぐに医療機関へ相談・受診する
彼岸花を口にしてしまった、あるいはその疑いがある場合は、症状が出ていなくても、すぐに専門の機関に相談し、医療機関を受診してください。自己判断で様子を見るのは大変危険です。
どこに相談すればよいか迷ったときは、「公益財団法人 日本中毒情報センター」が運営する中毒110番に電話で相談することもできます。医師や薬剤師などの専門家が、年中無休で適切なアドバイスをしてくれます。
病院へ行く際は、先ほど確認した「いつ、何を、どのくらい」という情報と、もし残っていれば食べた植物の一部を持って行くと、診察がスムーズに進みます。
6.2.2 口の中に残っているものは取り除く
応急処置として、口の中に彼岸花の破片などが残っている場合は、指でかき出すか、水で口をよくすすいで吐き出させてください。ただし、無理に喉に指を入れて吐かせるのはやめましょう。吐いたものが気管に入ってしまう恐れがあり、特に意識がはっきりしない場合は大変危険です。
6.3 ペット(犬・猫)が食べてしまった場合の対処法
6.3.1 すぐに動物病院へ連絡を
大切な愛犬や愛猫が彼岸花を食べてしまった、またはその可能性がある場合も、人間と同じくすぐに動物病院へ連絡することが最優先です。夜間や休診日であっても、救急対応してくれる動物病院を探して、必ず獣医師の指示を仰いでください。
電話をする際には、以下の情報を伝えられるように準備しておくと良いでしょう。
- ペットの種類、年齢、体重
- 彼岸花のどの部分を、どのくらい食べたか(食べてしまった時間)
- 現在のペットの様子(嘔吐、よだれ、ぐったりしているなど)
獣医師の指示なく、自己判断で塩水を飲ませて吐かせようとするなどの処置は、かえって状態を悪化させる危険があるため、絶対にやめましょう。
6.4 やってはいけないNG行動
良かれと思ってしたことが、かえって危険な状況を招くこともあります。以下の行動は絶対に避けてください。
やってはいけないこと | その理由 |
---|---|
自己判断で吐かせる | 吐いたものが気管や肺に入り、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こす危険があります。特に意識が朦朧としている場合は大変危険です。 |
塩水や牛乳を飲ませる | 塩水は高ナトリウム血症を引き起こし、症状を悪化させることがあります。牛乳も効果は科学的に証明されていません。 |
症状がないからと様子を見る | 毒の成分が体に吸収されてから症状が出ることもあります。時間が経つほど重症化する可能性があるため、すぐに専門家に相談しましょう。 |
いざという時に慌てないためにも、お近くの病院や夜間救急病院、そして中毒110番の連絡先を、普段からメモしておくと心強いですね。
7. まとめ
秋の散策で目を楽しませてくれる彼岸花ですが、その球根を中心にリコリンという毒が含まれているのは事実です。素手で触れる分には心配いりませんが、茎の汁には少し注意が必要ですね。田んぼの畦道で見かけるのは、この毒の力でモグラやネズミから作物を守る、昔ながらの知恵なのです。小さなお子様やペットがいるご家庭では、誤って口にしないよう見守ってあげてください。正しい知識を身につけて、美しい秋の風景を安心して楽しみましょう。
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