春告鳥(はるつげどり)とは? 意味や読み方、春告草、春告魚は?

「春告鳥」という言葉をご存知ですか?この記事を読めば、春の訪れを知らせるこの美しい言葉の意味や正しい読み方、代表的な鳥であるウグイスの生態や鳴き声の秘密が詳しくわかります。実は、春告鳥はウグイスだけではありません。地域による違いや、春の気配を伝える「春告草」「春告魚」についても解説。春を告げる存在は一つではなく、それぞれが古くから日本の文化や暮らしに深く関わってきたことが見えてきます。

目次

1. 春告鳥とは 最初に知りたい基本情報

「春告鳥(はるつげどり)」という言葉、どこかで耳にされたことがあるのではないでしょうか。その響きだけで、なんだか心がうきうきして、春の暖かな日差しや、新しい生命の息吹を感じさせてくれるような、素敵な言葉ですよね。厳しい冬が終わりを告げ、待ちに待った春がやってくる…そんな喜びを私たちに伝えてくれる存在、それが春告鳥です。この最初の章では、春告鳥とはいったいどのようなものなのか、基本的な情報から一緒に見ていきましょう。

1.1 春告鳥の正しい読み方

まず、「春告鳥」の読み方ですが、これは「はるつげどり」と読みます。「春を告げる鳥」、言葉の通り、春の訪れを知らせてくれる鳥という意味が込められています。美しい日本の言葉の一つですね。

1.2 春告鳥が持つ意味 春の訪れを知らせる使者

春告鳥とは、特定の種類の鳥だけを指す名前ではなく、「春の到来を告げる鳥」の総称として使われる言葉です。長く厳しい冬が終わり、草木が芽吹き、花が咲き始める春。そんな待ち遠しい季節の訪れを、その鳴き声や姿でいち早く私たちに知らせてくれる、まさに「春の使者」といえる存在です。昔から、人々は春告鳥の声を聞いて、農作業を始める目安にしたり、生活の中に春の訪れを感じ取ったりしてきました。春告鳥の声を聞くと、心がぱっと明るくなり、新しい季節への期待感で満たされることでしょう。

1.3 春告鳥と呼ばれる鳥の代表 ウグイス

さて、「春告鳥」と聞いて、多くの方が真っ先に思い浮かべる鳥がいるのではないでしょうか。それは、「ウグイス(鶯)」ですね。ウグイスは、古くから春告鳥の代表格として、日本人に広く親しまれてきました。その美しい鳴き声は、春を代表する音風景の一つとして、私たちの心に深く刻まれています。

1.4 なぜウグイスが春告鳥と呼ばれるの?その由来

では、なぜウグイスが春告鳥の代表としてこれほどまでに定着しているのでしょうか。その理由はいくつか考えられます。

最も大きな理由は、やはりウグイスの特徴的な「ホーホケキョ」というさえずりでしょう。この美しい鳴き声は、ちょうど早春の頃、まだ寒さが残る中でいち早く聞かれ始めるため、人々はウグイスの声をもって「ああ、春が来たのだな」と実感するのです。

また、ウグイスは古くから和歌や俳句の世界でも頻繁に詠まれ、春の象徴として文化的に深く根付いてきたことも大きな理由の一つです。その美しい声や、春の訪れを告げるという役割が、多くの文学作品の中で称えられてきました。こうした背景から、ウグイスは春告鳥の代名詞として、私たちの心に深く刻まれているのですね。

項目内容
読み方はるつげどり
意味春の訪れを告げる鳥の総称
代表的な鳥ウグイス
ウグイスが代表的な理由早春に「ホーホケキョ」と特徴的な声で鳴き始めること、古くから和歌などで春の象徴として親しまれてきたことなど。

このように、春告鳥という言葉には、春を待ちわびる人々の想いや、自然と共に暮らしてきた日本の豊かな文化が息づいているのですね。

2. 春告鳥の代表格 ウグイスの生態と特徴

春の訪れを告げる鳥として、真っ先に思い浮かぶのがウグイスではないでしょうか。その美しい鳴き声は古くから日本人に愛され、春の象徴として親しまれてきました。ここでは、そんな春告鳥の代表格であるウグイスの生態や、興味深い特徴について、もう少し詳しく見ていきましょう。

2.1 ウグイスの美しい鳴き声 ホーホケキョの秘密

ウグイスといえば、やはり「ホーホケキョ」という美しい鳴き声が印象的ですよね。この特徴的な鳴き声は、春の繁殖期を迎えたオスだけが発する「さえずり」で、自分の縄張りを宣言したり、メスへの巧みな求愛のアピールだったりするのです。冬の間は「チャッ、チャッ」という地鳴きしかしませんが、春が近づき暖かくなってくると、オスは一生懸命さえずりの練習を始めます。最初は少しぎこちない鳴き声も、だんだんと上達し、やがて美しい「ホーホケキョ」となって私たちの耳に届くのですね。この鳴き声は、実は親から教わるのではなく、周りのウグイスの鳴き声を聞いて学習すると言われています。だから、地域や個体によって少しずつ節回しが違うこともあるんですよ。ちなみに、ウグイスは「日本三鳴鳥(にほんさんめいちょう)」の一つにも数えられ、その鳴き声の美しさは古来より高く評価されています。

2.2 ウグイスの姿かたちと生息地

「ホーホケキョ」という鳴き声はよく知られていますが、ウグイスの姿をじっくりと見たことがある方は意外と少ないかもしれません。ウグイスの大きさはスズメよりも少し小さく、全長14cmほど。体の色は、一般的に想像される鮮やかな緑色(鶯色)ではなく、実際にはオリーブ色がかった茶色、いわゆる「オリーブ褐色」をしています。背中側がこのオリーブ褐色で、お腹側は白っぽい色をしています。オスもメスもほぼ同じ色合いで見分けるのは難しいのですが、オスの方が少しだけ体が大きいと言われています。とても警戒心が強く、人前に姿を現すことは少ないため、「声はすれども姿は見えず」ということわざがあるほどです。

ウグイスは、北海道から沖縄まで、日本全国の平地から山地の林や笹薮(ささやぶ)、庭木などに生息しています。特に、身を隠しやすい笹薮や低い木の茂みを好み、その中で巧みに移動しながら生活しています。多くは一年を通して同じ地域で暮らす「留鳥(りゅうちょう)」ですが、寒い地域にすむものは冬になると暖かい場所へ移動する「漂鳥(ひょうちょう)」もいます。

2.3 ウグイスとメジロ 見分け方のポイント

春になると、梅の木に緑色の小鳥がやってきて蜜を吸っているのを見かけることがありますね。その姿を見て「ウグイスだ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それはもしかしたらメジロかもしれません。ウグイスとメジロは、春によく見かける小鳥として混同されやすいのですが、実は見た目も鳴き声も異なる特徴を持っています。ここで、二つの鳥の見分け方のポイントを整理してみましょう。

特徴ウグイスメジロ
体の色背中がオリーブ褐色(いわゆる鶯色とは異なる地味な色合い)、お腹は白っぽい。背中が鮮やかな黄緑色、喉は黄色、お腹は白っぽく、目の周りがはっきりと白い輪で縁取られているのが最大の特徴です。
鳴き声オスは「ホーホケキョ」、地鳴きは「チャッ、チャッ」。「チー、チー」「チュイー」など、甲高く澄んだ声で鳴きます。
行動警戒心が非常に強く、笹薮や茂みの中に隠れていることが多いです。人前にあまり姿を見せません。比較的警戒心が薄く、人懐っこい面もあります。花の蜜を好み、梅や桜などの木々を活発に飛び回ります。
よく見かける場所笹薮、低木の茂み、林の中など。梅や桜、椿など花の咲く木、庭木、公園など。花の蜜を吸いに集まります。

このように、ウグイスとメジロは異なる特徴を持っています。特にメジロは、その名の通り目の周りが白いので、そこを注目すると見分けやすいでしょう。春の野山や公園で鳥を見かけたら、ぜひ観察してみてくださいね。

3. 春告鳥はウグイスだけ?地域による違いや他の鳥

「春告鳥」と聞けば、多くの方がウグイスの「ホーホケキョ」という美しい鳴き声を思い浮かべることでしょう。確かにウグイスは春告鳥の代表格として知られていますが、実は春の訪れを知らせてくれるのはウグイスだけではないのですよ。日本各地の気候や風土、そしてそこに暮らす人々の感性によって、さまざまな鳥たちが春の使者として親しまれてきました。この章では、そんなウグイス以外の春を告げる鳥たちや、地域によって異なる春告鳥の興味深いお話をご紹介しますね。

3.1 ウグイス以外にもいる!春を告げる鳥たち

ウグイスほど全国的に知られてはいなくても、その鳴き声や姿で春の到来を感じさせてくれる鳥たちがいます。ここでは、そんな鳥たちの一部を、その特徴とともにご紹介しましょう。

鳥の名前主な特徴春の訪れを感じさせる理由
ヒバリ(雲雀)春の空高く舞い上がりながら長く複雑にさえずります。「ピーチクパーチク」と表現されることもありますね。早春から活動し、その明るく賑やかなさえずりが春の喜びを告げているかのようです。昔は農作業を始める目安とされた地域もありました。
ジョウビタキ(尉鶲)主に冬鳥として日本に渡ってきます。オスは胸の鮮やかな橙色が特徴的で、「ヒッヒッ」「カッカッ」と可愛らしく鳴きます。冬の終わりから早春にかけてその姿を見かけると、厳しい寒さが和らぎ春の気配を感じさせてくれます。春を告げるというよりは、冬の終わりと春の予感を伝える鳥と言えるかもしれません。
モズ(百舌、鵙)秋に甲高い声で鳴くことで知られますが、春先にもその鋭い鳴き声を聞くことがあります。木の枝などに虫やカエルを突き刺す「はやにえ(早贄)」というユニークな習性も持っています。冬の静けさを破るようなモズの声は、眠っていた自然が目覚め、新しい季節が始まる力強さを感じさせることがあります。
ホオジロ(頬白)スズメより少し大きく、頬に白い斑点があるのが名前の由来です。「一筆啓上仕候(いっぴつけいじょうつかまつりそうろう)」などと聞きなされる、特徴的なさえずりをします。春の繁殖期になるとオスが日当たりの良い場所で盛んにさえずり、その声は春の陽気さを象徴しているかのようです。

これらの鳥たちも、それぞれの仕方で私たちに春の訪れを教えてくれるのですね。

3.2 地域によって異なる「春告鳥」

日本は南北に長く、気候も多様性に富んでいます。そのため、春の訪れの時期や、その時期に活発に活動する鳥の種類も地域によって少しずつ異なります。例えば、雪深い地域では、ウグイスよりも早くから活動を始める他の鳥の声に春を感じるかもしれませんし、渡り鳥が多く通過する地域では、特定の渡り鳥の到来を春のしるしと捉えることもあるでしょう。

具体的な例を挙げますと、北海道のような寒さが厳しい地域では、ウグイスが姿を見せるのが本州よりも遅くなることがあります。そのため、ヒバリや他の小鳥たちのさえずりの方が、より早く春の訪れを実感させてくれることがあるのです。また、地域によってはカケスやキジバトなど、より身近な鳥の鳴き声や行動の変化に春の気配を感じ取ることもあります。このように、それぞれの土地で昔から親しまれてきた鳥が、その地域ならではの「春告鳥」として大切にされてきたのですね。

どの鳥を「春告鳥」と感じるかは、その土地の自然環境や、そこに住む人々の暮らしと深く結びついているのでしょう。

3.3 春告鳥の多様性と日本人の感性

ウグイスが春告鳥の代表であることは間違いありませんが、こうして見ていくと、日本人は実に多くの鳥たちに春の訪れを感じ取り、心を寄せてきたことがわかります。それは、自然の小さな変化に敏感で、季節の移ろいを大切にしてきた日本人の豊かな感性の表れと言えるのではないでしょうか。

あなたの身の回りでは、どんな鳥が春の訪れを知らせてくれますか? ウグイスはもちろん、ヒバリやジョウビタキ、あるいはもっと別の鳥かもしれませんね。鳥たちの声にそっと耳を澄ませ、愛らしい姿を探してみることで、春の訪れをより深く感じられることでしょう。それは、日々の暮らしに彩りを与え、心を豊かにしてくれる素敵な体験となるはずです。

4. 春のきざし 春告草とはどんな植物?

春の訪れを告げるのは、愛らしい声でさえずる鳥たちだけではありません。厳しい冬の寒さが和らぎ、大地が目覚め始める頃、いち早く春のきざしを感じさせてくれる植物があります。それが「春告草(はるつげぐさ)」と呼ばれる草花たちです。その名の通り、春の到来を私たちに知らせてくれる、なんとも風情のある名前ですね。

春告草にはさまざまな種類があり、それぞれが可憐な花を咲かせ、私たちの心を和ませてくれます。ここでは、代表的な春告草とその魅力、そして他にも春を彩る草花たちをご紹介しましょう。

4.1 代表的な春告草 梅の花とその魅力

春告草と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは「梅(うめ)の花」ではないでしょうか。まだ寒さが残る2月から3月にかけて、他の花に先駆けていち早く花を咲かせ始める梅は、まさに春の先駆けといえる存在です。その凛とした美しさと、ふくいくとした甘い香りは、古くから日本人に愛されてきました。

梅の花が春告草の代表格とされるのには、いくつかの理由があります。

  • 早春に咲き始める開花の早さ:厳しい寒さの中でいち早く花を咲かせ、春の訪れを力強く告げます。
  • 気品ある香りと姿:白や紅、淡いピンク色の花びらは可憐でありながらも気品があり、その香りは春の訪れをより一層感じさせてくれます。
  • 古来より親しまれてきた歴史:万葉集にも詠まれるなど、古くから観賞用としてだけでなく、歌や絵画の題材としても親しまれてきました。

梅には「紅梅(こうばい)」や「白梅(はくばい)」など様々な品種があり、それぞれに趣が異なります。花言葉には「高潔」「忍耐」「忠実」などがあり、厳しい冬を耐え忍んで美しい花を咲かせる梅の姿に由来すると言われています。観梅は、春の訪れを感じる風流な楽しみの一つですね。

4.2 他にもある春告草の種類

梅の他にも、春の訪れを知らせてくれる可愛らしい春告草はたくさんあります。ここでは、代表的なものをいくつかご紹介しましょう。それぞれの花が持つ個性や花言葉を知ると、春のお散歩がもっと楽しくなるかもしれませんね。

名前特徴主な花言葉開花時期の目安
福寿草(フクジュソウ)旧暦の元旦頃に咲き始めることから「元日草(がんじつそう)」とも呼ばれる縁起の良い花です。太陽の光を浴びて開く黄金色の花が特徴です。幸せを招く、永久の幸福、祝福2月~4月
水仙(スイセン)冬の終わりから早春にかけて、清楚で気品のある花を咲かせます。甘く爽やかな香りも魅力の一つ。日本水仙やラッパスイセンなど種類も豊富です。うぬぼれ、自己愛(ギリシャ神話より)、希望、尊敬12月~4月
クロッカス雪解け間近の地面から顔を出す、春の訪れを告げる代表的な球根植物。紫、白、黄色など鮮やかな花色が楽しめます。青春の喜び、私を信じて、切望2月~4月
桜草(サクラソウ)その名の通り、桜の花に似た可憐な花を咲かせます。日本の野山に自生する種類もあり、古くから親しまれています。初恋、純潔、憧れ、希望3月~5月
タンポポ道端や野原など、私たちの身近な場所で春の訪れを知らせてくれる黄色い花。綿毛になって飛んでいく姿も愛らしいですね。愛の神託、真心の愛、誠実、別離3月~5月

これらの春告草は、厳しい冬を乗り越えて力強く咲き誇り、私たちに春の喜びと生命の息吹を感じさせてくれます。お庭や公園、道端などでこれらの花を見かけたら、ぜひ足を止めて、その可憐な姿と春の香りを楽しんでみてくださいね。

5. 旬の味覚 春告魚とはどんな魚?

春の訪れは、鳥の声だけでなく、海の幸からも感じることができます。春に旬を迎えたり、産卵のために沿岸にやってきたりする魚たちの中には、「春告魚(はるつげうお)」と呼ばれるものがいます。食卓にのぼれば、その味わいとともに春の到来を実感させてくれる、そんな嬉しい存在ですね。ここでは、春の味覚を代表する春告魚について、詳しくご紹介しましょう。

5.1 代表的な春告魚 ニシンやメバル

春告魚と聞いて、まず思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。代表的な春告魚には、ニシンやメバルがいます。

5.1.1 ニシン 春を告げる群来(くき)の記憶

ニシンは、かつて北海道の日本海沿岸に春になると大群で押し寄せ、産卵することから「春告魚」の代表格として知られています。その大群は「群来(くき)」と呼ばれ、海の色が変わるほどだったと言われています。産卵期のニシンは脂がのり、独特の風味と濃厚な旨みが楽しめるのが魅力です。塩焼きや煮付けはもちろん、身欠きニシンや、お正月料理でおなじみの数の子もニシンの卵ですね。近年では漁獲量が減って貴重な魚となりつつありますが、春の味覚として今も多くの人に愛されています。

5.1.2 メバル 磯の岩陰から春を知らせる

メバルもまた、春を代表する魚の一つです。漢字では「眼張」と書き、その名の通り大きな目が特徴的ですね。春になると沿岸の岩礁域でよく釣れるようになり、淡白ながらも上品な味わいの白身魚として人気があります。煮付けにすると、ふっくらとした身に甘辛い味が染み込み、ごはんが進む一品になります。その他にも、唐揚げや塩焼き、新鮮なものは刺身でいただくのも美味しいでしょう。春の磯釣りのターゲットとしても親しまれています。

5.2 他にもいる春を告げる魚たち

ニシンやメバル以外にも、春の訪れを感じさせてくれる魚はたくさんいます。地域によって「春告魚」として親しまれている魚も様々です。ここでは、その一部をご紹介しましょう。

魚の名前旬の時期(目安)特徴・美味しい食べ方
サワラ(鰆)春(3月~5月頃)「魚」へんに「春」と書くことからもわかるように、春を代表する魚です。上品でくせのない白身が特徴で、刺身、たたき、塩焼き、西京焼き、照り焼きなど、様々な料理で楽しめます。特に瀬戸内海沿岸では春の味覚として珍重されています。
シラウオ(白魚)早春~春(2月~4月頃)透き通った美しい姿が特徴の小さな魚です。春の風物詩として知られ、お吸い物や卵とじ、かき揚げなどでその繊細な味わいを楽しむことができます。生きたまま踊り食いする地域もありますね。
イカナゴ(玉筋魚)春(2月下旬~4月頃)地域によっては「コウナゴ」とも呼ばれます。特に瀬戸内海沿岸や伊勢湾、三河湾などでは、春の風物詩「イカナゴのくぎ煮」が有名です。甘辛く煮付けたイカナゴはご飯のお供にぴったりで、春の訪れを告げる家庭の味として親しまれています。
カツオ(鰹)春(初鰹:4月~5月頃)「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」と詠まれるように、初鰹は春から初夏にかけての味覚です。さっぱりとした赤身が特徴で、たたきや刺身でいただくのが一般的。秋の戻り鰹に比べて脂は少なめですが、その爽やかな味わいが魅力です。
ホタルイカ(蛍烏賊)春(3月~5月頃)富山湾のものが特に有名で、春の風物詩として知られています。小さな体に凝縮された濃厚な旨みとワタのほろ苦さが特徴です。茹でて酢味噌和えにしたり、沖漬けにしたり、パスタの具材としても美味しくいただけます。

これらの魚たちが市場に並び始めると、いよいよ春本番だと感じさせてくれますね。お近くの鮮魚店やスーパーで春告魚を見かけたら、ぜひ食卓に取り入れて、旬の味覚を楽しんでみてはいかがでしょうか。その美味しさが、きっと心にも春を運んできてくれることでしょう。

6. 春告鳥と日本の文化 俳句や和歌に詠まれた姿

春の訪れを告げる鳥、春告鳥。その代表であるウグイスは、古くから日本の人々に愛され、その姿や鳴き声は多くの文学作品に詠み込まれてきました。まるで春の使者のように、その声は私たちの心に新しい季節の喜びを届けてくれるのですね。ここでは、春告鳥が日本の文化、特に俳句や和歌の中でどのように表現されてきたのかを紐解いていきましょう。

6.1 俳句に息づく春告鳥の風情

俳句の世界において、ウグイスは春を代表する季語として、なくてはならない存在です。特に、その年初めて聞くウグイスの鳴き声である「初音(はつね)」は、待ちわびた春の到来を実感させ、多くの俳人たちがその感動を句に込めてきました。厳しい冬を乗り越え、ようやく耳にするその声は、まさに希望の響きと言えるでしょう。

古今の名句の中にも、ウグイスを詠んだものは数多くあります。いくつか代表的な句をご紹介しますね。

6.1.1 代表的な俳句

俳句作者ポイント
鶯や 餅に糞する 縁の先松尾芭蕉のどかな春の日の縁側で、ウグイスが餅に糞をしてしまうという、日常の中の微笑ましい一コマと、春の生命力を生き生きと描いています。どこかユーモラスでありながら、春の暖かさを感じさせる句ですね。
鶯や 柳のうしろ 薮の前与謝蕪村芽吹いたばかりの柳の緑、その奥に見える薮、そしてそこから聞こえてくるウグイスの声。春の情景が目に浮かぶような、奥行きのある美しい構図が見事です。声はすれども姿は見えず、という奥ゆかしさも感じられます。
初音聞く その日その日の 尊さよ小林一茶ウグイスの初音を聞くたびに、今日という一日を無事に迎えられたこと、その日々の積み重ねがいかに尊いものであるかを実感するという、作者のしみじみとした心情が伝わってきます。春の喜びとともに、命の尊さを教えてくれるようです。

これらの句を読むと、ウグイスが単に季節の到来を告げるだけでなく、人々の暮らしや心の機微に深く関わり、共感や感動を呼び起こす存在であったことがよくわかります。その声一つで、情景や感情を豊かに表現できるのが、俳句の素晴らしいところですね。

6.2 和歌に詠まれた春告鳥の心

和歌の世界においても、ウグイスは古くから特別な鳥として扱われ、多くの歌人によってその美しい声や姿が詠まれてきました。日本最古の歌集である『万葉集』の時代から、ウグイスは春の訪れを象徴する鳥として、また時には人の恋心や切ない想いを託す対象として、歌の中で重要な役割を果たしてきたのです。

心に響くウグイスの和歌をいくつかご紹介いたしましょう。

6.2.1 代表的な和歌

和歌作者歌集ポイント
鶯の 谷よりいづる 声なくは 春くることを 誰か知らまし大江千里古今和歌集「もしウグイスが谷間から出てきて鳴く声がしなかったなら、春が来たことを一体誰が知ることができただろうか、いや誰も知ることはできないだろう」という意味です。ウグイスの鳴き声こそが、春の到来をはっきりと人々に知らせる重要な合図であると詠んでおり、春告鳥としての役割を的確に捉えています。
わが宿の 梅が枝に来て 鳴くうぐひす 春の心は 我ぞまされる詠み人知らず(万葉集にも類似歌あり)古今和歌集(仮名序に引用される歌の類歌)「私の家の梅の枝に来て鳴いているウグイスよ、春を喜ぶ心は私の方がまさっているのだよ」と、まるでウグイスに語りかけるような親しみが感じられます。春を迎えた喜びをウグイスと分かち合いたい、そんな温かい気持ちが伝わってくる歌ですね。
春霞 たなびく山の 桜花 うつろはむとや 鶯の鳴く紀友則古今和歌集「春霞がたなびいている山の桜の花が、もう散ってしまうというのだろうか、それを惜しんでウグイスが鳴いているのだろうか」と詠んでいます。美しい桜の散りゆく様を、ウグイスの鳴き声に重ね合わせ、自然の移ろいゆく美しさと、それに対する細やかな感受性が表現されています。

このように、和歌に詠まれたウグイスは、美しい春の情景を一層引き立てる存在として、また、人の喜びや悲しみ、自然への畏敬の念といった様々な感情を映し出す鏡のような役割を担ってきました。その声は、歌人たちの豊かな感性によって、時代を超えて私たちの心に響き渡ります。

6.3 春告鳥と日本人の美意識

ウグイスの「ホーホケキョ」という特徴的な鳴き声は、私たち日本人にとって、単なる鳥の声以上の意味を持っています。それは、日本の四季の移ろいを敏感に感じ取り、自然と共生してきた日本人の繊細な美意識と深く結びついているからでしょう。まだ寒さが残る早春に、いち早く春の訪れを告げるその澄んだ声は、厳しい冬の終わりと、新しい生命が息吹く暖かな季節への希望を感じさせてくれます。

また、「梅に鶯」という言葉があるように、ウグイスは梅の花とセットで語られることが多く、春を代表する美しい風物詩として、絵画や工芸品、着物の柄など、様々な芸術のモチーフとされてきました。これは、日本人が自然の中に調和や美しさを見出し、それを生活や文化の中に巧みに取り入れてきたことの証と言えるでしょう。ウグイスの姿は見えなくても、その声を聞くだけで梅の花が咲き誇る情景を思い浮かべることができるのは、私たちの中に深く根付いた美意識の表れかもしれませんね。

俳句や和歌といった文学作品を通じて、私たちは遠い昔の人々が春告鳥に寄せた想いや、そこから感じ取った季節の趣、そして自然への愛情を知ることができます。それは、忙しい現代を生きる私たちにとっても、ふと立ち止まって季節の移ろいを感じ、自然を愛でる心や、新しい始まりを迎える喜びを思い出させてくれる、大切なメッセージなのかもしれません。

7. まとめ

「春告鳥」とは、その名の通り春の訪れを告げる鳥たちの総称で、代表的なのはウグイスですね。ウグイスの「ホーホケキョ」という美しい鳴き声は、私たちに本格的な春の到来を実感させてくれます。しかし、春を告げるのは鳥だけではありません。「春告草」である梅の花や、「春告魚」のニシンやメバルなども、古くから日本の食文化や季節の風物詩として親しまれてきました。これらの存在は、俳句や和歌にも詠まれ、私たちの暮らしに彩りと季節の移ろいを感じさせてくれる大切なもの。日々の生活の中で、こうした春のしるしを見つけて、心豊かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

ハレノヒ編集部は、「わたしらしく、身軽に暮らす」をテーマに、日々の暮らしを前向きに楽しむためのヒントをお届けしています。
美容や健康、趣味、暮らしの工夫など、50代以降の女性を中心に、誰もが自分らしく輝けるような情報をやさしい目線で発信しています。
ちょっと気になる話題や、ふと心に残る言葉も添えて、皆さまの毎日が少し晴れやかになりますように。

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