「終活」という言葉を耳にするけれど、何から手をつければ良いのか分からない、と感じていませんか。この記事では、終活でやるべきことの全リストから、初心者でも簡単な終活ノートの作り方まで、具体的な手順を一つひとつ丁寧に解説します。終活は、残される家族のためだけでなく、ご自身の人生を振り返り、これからの毎日をより豊かに、自分らしく過ごすための大切な準備です。まずは何から始めるか、一緒に考えてみませんか。
1. 終活とは 人生の終わりに向けて行う準備活動のこと
「終活」と聞くと、少し寂しい気持ちになるかもしれませんね。でも、終活は決してネガティブなものではなく、これからの人生をより自分らしく、晴れやかな気持ちで過ごすための前向きな準備活動なのです。

具体的には、人生のエンディング、つまり最期の時に向けて、ご自身の希望や想いを整理し、準備を進めることを指します。医療や介護、お葬式やお墓のこと、大切な財産の分け方、そして何よりも、これまでお世話になった方々への感謝の気持ちを伝えること。これら一つひとつに丁寧に向き合う時間が、終活なのです。
自分の人生の棚卸しをすることで、本当に大切にしたいことが見えてきます。それは、残されたご家族への負担を軽くするだけでなく、ご自身の残りの日々を、心穏やかに、そして豊かに彩るための大切なステップになるはずですよ。
1.1 終活が注目される社会的な背景
近年、「終活」という言葉が当たり前のように使われるようになったのには、私たちの暮らしを取り巻く社会の変化が大きく関係しています。なぜ今、多くの人が終活に関心を寄せているのでしょうか。その背景を少し覗いてみましょう。
社会的な変化 | 終活への影響 |
---|---|
超高齢社会の進展 | 日本は世界でもトップクラスの長寿国です。総務省統計局の発表によると、2023年9月時点で総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は29.1%にものぼります。(出典:統計局ホームページ) 人生100年時代といわれる現代だからこそ、ご自身の最期についてじっくり考える時間が増え、備えの必要性を感じる方が多くなりました。 |
核家族化とおひとりさまの増加 | かつてのように三世代が同居する家庭が減り、子どもたちが遠方で暮らしていたり、生涯独身の方や、配偶者に先立たれたりして「おひとりさま」で暮らす方が増えています。 いざという時に頼れる人が近くにいない可能性も考え、ご自身のことを誰かに託すのではなく、ご自身で決めておきたいという意識が高まっています。 |
価値観の多様化 | お葬式やお墓のあり方も、時代とともに大きく変化しました。従来のお墓だけでなく、樹木葬や海洋散骨、手元供養など、さまざまな選択肢が生まれています。 「家」という単位ではなく「個人」を尊重する考え方が広まり、他の誰でもない、自分らしいエンディングを迎えたいと願う方が増えていることも、終活が注目される理由の一つです。 |
1.2 終活を行う目的と必要性
終活は、ただ単に身の回りを整理するだけではありません。そこには、ご自身と、ご自身を大切に想う人々にとって、たくさんの大切な目的があります。終活を行うことで、どのような安心や希望が生まれるのでしょうか。
主な目的は、大きく分けて「残される家族のため」と「自分自身のため」の2つです。

- 残される家族のため
もしもの時、ご家族は深い悲しみの中で、さまざまな手続きや判断に追われることになります。相続、お葬式、各種契約の解約など、その負担は心身ともに計り知れません。終活によってご自身の希望を明確にしておくことは、ご家族の迷いや悩みを減らし、無用なトラブルを防ぐための、最後の愛情表現であり、思いやりです。 - 自分自身のため
終活は、ご自身の人生を振り返る貴重な機会です。楽しかったこと、頑張ってきたこと、感謝していること。一つひとつを思い返すことで、ご自身がどう生きてきたのかを再確認できます。そして、「これからどう生きたいか」を見つめ直し、残りの人生をより前向きに、自分らしく生きるための道しるべとなるのです。ご自身の意思が尊重されるという安心感は、日々の暮らしに穏やかな気持ちをもたらしてくれるでしょう。
終活をせずにいると、ご自身の希望とは違う形で物事が進んでしまったり、ご家族が「お母さんはどうしたかったんだろう」と悩み続けてしまったりするかもしれません。そうした事態を避け、関わる人すべてが穏やかな気持ちでその時を迎えられるようにするためにも、終活はとても大切な役割を担っているのです。
2. 終活を始める3つの大きなメリット
「終活」と聞くと、少し寂しい気持ちになるかもしれませんね。でも、実は終活は、これからの人生をもっと自分らしく、晴れやかに過ごすための素敵な準備活動なのです。ご自身のもしもの時に備えることはもちろん、今をより良く生きるためのヒントがたくさん詰まっています。ここでは、終活を始めることで得られる3つの大きなメリットをご紹介します。きっと、前向きな気持ちで一歩を踏み出したくなるはずですよ。
2.1 メリット1 残された家族の精神的・経済的負担を軽くする
ご自身が旅立った後、大切なご家族は深い悲しみの中で、さまざまな手続きや判断に追われることになります。終活は、そんなご家族への最後の優しさとなり、「ありがとう」と感謝される準備ともいえるでしょう。
具体的に、ご家族がどのようなことで悩み、終活によってどう負担を軽くできるのか、下の表で見てみましょう。
家族が直面する悩み | 終活でできること |
---|---|
葬儀の形式や費用、誰を呼ぶべきか分からず困ってしまう。 | ご自身の希望(形式、規模、予算、呼んでほしい人など)を明確に伝えておくことで、ご家族は迷わず故人の遺志を尊重したお見送りができます。 |
銀行口座や保険、不動産などの資産がどこにどれだけあるか分からず、手続きが進まない。 | 財産目録を作成し、契約情報などを一覧にしておくことで、相続手続きがスムーズに進み、請求漏れなども防げます。 |
遺品が多すぎて、どれを処分し、どれを残すべきか判断に迷い、精神的にも体力的にも疲弊してしまう。 | ご自身で身の回りを整理(生前整理)しておくことで、ご家族の片付けの負担を大幅に減らすことができます。 |
相続をめぐって、家族間で意見が対立してしまうかもしれない。 | 遺言書を作成したり、ご自身の想いを伝えたりしておくことで、無用なトラブルを防ぎ、円満な相続の助けとなります。 |
このように、事前に準備をしておくことで、ご家族は「本人の希望通りにできてよかった」と安心することができます。大切なご家族が、あなたを偲ぶ時間を穏やかに過ごせるように、思いやりの心を形にしておきませんか。

2.2 メリット2 自分の人生の希望や想いを確実に伝えられる
終活は、ご家族のためだけに行うものではありません。ご自身の人生のエンディングを、自分自身でデザインするための大切な活動です。もしもの時が訪れても、ご自身の「こうしてほしい」という想いを尊重してもらえるよう、意思表示をしておくことができます。
例えば、医療や介護については、いざという時にご自身の意思を伝えられない状況になる可能性も考えられます。リビング・ウィル(事前指示書)などで「延命治療は希望しない」「最期は住み慣れた自宅で迎えたい」といった希望を形にしておけば、ご家族もその意思を尊重しやすくなり、あなたの尊厳が守られます。
また、お葬式やお墓についても、「好きだったあの音楽を流してほしい」「お花でいっぱいの祭壇にしてほしい」「海への散骨を希望する」など、ご自身らしいお別れの形を自由に描くことができます。ご家族が「どうすれば喜んでくれるだろう?」と悩むことなく、あなたの希望を叶えてくれるでしょう。
そして何より、普段は照れくさくてなかなか言えない感謝の気持ちや、人生の教訓、大切な人へのメッセージを言葉にして残すことができます。終活ノート(エンディングノート)などを活用してご自身の想いを綴ることで、あなたの愛情は時を超えてご家族の心に届き続けるはずです。
2.3 メリット3 自分のこれまでを振り返り残りの人生を豊かにする
終活の最も素敵なメリットは、「終わりの準備」ではなく、「残りの人生を最高に輝かせるためのスタート」になる点かもしれません。終活を通してご自身の人生をじっくりと見つめ直すことで、これからの毎日がもっと愛おしく、豊かなものに変わっていきます。
まずは、ご自身の歴史の棚卸しをしてみましょう。楽しかった思い出、乗り越えてきた困難、大切な出会い…。アルバムをめくるように過去を振り返ることで、ご自身が歩んできた道のりの尊さに改めて気づかされるでしょう。持ち物の整理(生前整理)も、一つひとつの品にまつわる思い出と向き合う、かけがえのない時間となります。
過去を振り返ると、自然と「これから」のことも見えてきます。「ずっと行きたかった場所に旅行したい」「新しい趣味を始めてみたい」「会いたい人がいる」など、やりたいことリスト(バケットリスト)を作ってみるのもおすすめです。目標ができると、毎日にハリが生まれ、より前向きな気持ちで過ごせるようになります。
このように、やるべきことや想いを整理し、将来への見通しを立てることで、漠然とした不安が和らぎ、心がすっと軽くなるのを感じられるはずです。「やるべきことは整えた」という安心感が、心に平穏をもたらし、日々の暮らしを穏やかで満ち足りたものにしてくれるでしょう。
3. 終活はいつから始める?おすすめのタイミングとは

「終活」という言葉を聞いて、「そろそろ考えた方がいいのかしら?」と気になり始める方は多いのではないでしょうか。でも、一体いつから手をつければ良いのか、はっきりとした答えがなくて迷ってしまいますよね。実は、終活を始めるのに「この年齢でなければいけない」という決まりは一切ありません。大切なのは、ご自身の心と体の状態に合わせて、無理なく始めることです。ここでは、終活を始めるのに良いとされる一般的な時期や、きっかけについてご紹介します。
3.1 50代から60代で始めるのが一般的
多くの方が終活を意識し始めるのが、50代から60代にかけての時期です。生命保険文化センターの調査(令和元年度「生活保障に関する調査」)によれば、自分自身の終末期の医療や葬儀などに関する希望を家族に伝えている人の割合は、50代で約3割、60代では4割を超え、年齢とともに高まる傾向にあります。
この年代は、子育てが一段落したり、ご自身のキャリアのゴールが見え始めたりと、少しずつ自分のための時間を持ちやすくなる頃。また、親の介護や相続を経験することで、終活をより身近なこととして捉える方が増える時期でもあります。心身ともにまだ元気で、判断力や体力にも余裕がある50代・60代のうちに準備を始めることで、焦らずじっくりと、これからの人生やご自身の希望に向き合うことができますよ。
3.2 定年退職や子どもの独立など人生の節目もきっかけに
年齢だけでなく、人生の大きな節目も、終活を始める素敵なきっかけになります。これまでの暮らしが変化するタイミングは、未来の自分や大切な家族について、改めて考える良い機会を与えてくれます。
例えば、次のような節目が挙げられます。
きっかけとなる人生の節目 | 考えやすいこと・始めやすいこと |
---|---|
定年退職 | 時間にゆとりが生まれるため、セカンドライフの過ごし方やお金の計画、趣味などをじっくり考えられます。資産の棚卸しを始めるのにも良い時期です。 |
子どもの独立・結婚 | 家族構成が変わり、ご夫婦二人の生活が始まります。これを機に、住まいのことや、家の片付け(生前整理)について考えてみるのもおすすめです。 |
還暦や古希などの誕生日 | 人生の大きな節目となる誕生日は、これまでの歩みを振り返り、これからの人生をどう豊かに過ごしたいかを考える絶好の機会になります。 |
親の介護や相続を経験した時 | ご自身の親を見送る経験は、自分の将来を具体的に考えるきっかけになります。家族にどんなことで苦労をかけたか、自分ならどうしてほしいかを考える機会です。 |
大きな病気や入院をした時 | 健康のありがたみを実感し、もしもの時の医療や介護について真剣に考えるようになります。元気になったタイミングで、ご自身の希望をまとめておくと安心です。 |
このようなライフイベントをきっかけに、「わたしの場合はどうだろう?」と、ご自身のことに置き換えて考えてみてはいかがでしょうか。
3.3 思い立ったが吉日 健康なうちに始めることが重要
ここまで一般的なタイミングについてお話ししてきましたが、何よりも大切なのは「始めたい」と思ったその時に、一歩を踏み出してみることです。そして、できる限り心も体も「健康なうち」に始めることをおすすめします。
なぜなら、終活には冷静な判断力や、時には体力が必要になるからです。
- 冷静な判断力:財産や相続、延命治療の希望など、重要な決断をするためには、心身ともに元気で、落ち着いて物事を考えられる状態であることが望ましいです。
- 十分な体力:長年暮らしてきた家の片付け(生前整理)や、必要な手続きのために役所や銀行を回るには、想像以上に体力を使います。
- 豊かな時間:時間に追われることなく、じっくりと自分の人生を振り返ったり、家族と話し合ったりする時間を十分に持つことができます。
「終活」は、決して終わりに向かうための寂しい準備ではありません。むしろ、これからの人生を不安なく、より自分らしく、晴れやかな気持ちで過ごすための前向きな活動です。「まだ早いかしら」と思わずに、まずは今の気持ちをノートに書き出してみるなど、できることから軽やかに始めてみませんか。
4. 【完全版】終活でやることリスト一覧
「終活」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれませんが、やるべきことは意外とシンプルです。これからの人生をより豊かに、そして「わたしらしく」締めくくるための準備と考えれば、少し気持ちが軽やかになりませんか?ここでは、終活でやっておきたいことを5つのカテゴリーに分けて、わかりやすくご紹介します。ご自身のペースで、一つひとつゆっくりと進めていきましょうね。
4.1 お金や財産に関すること
お金にまつわる話は、少しデリケートで後回しにしがちかもしれません。でも、ご自身が築き上げてきた大切な資産を円満に引き継いでもらうため、そして残されるご家族が困らないようにするためには、とても大切な準備です。まずは現状を把握することから始めてみましょう。

4.1.1 財産目録の作成と資産の把握
ご自身の持っている財産をすべてリストアップし、「財産目録」としてまとめてみましょう。何がどこにどれくらいあるのかを明確にすることで、ご自身の現状把握にもつながりますし、相続の際の手続きがぐっとスムーズになります。プラスの財産だけでなく、ローンなどのマイナスの財産も忘れずに書き出すことが大切ですよ。
財産の種類 | 具体的な内容 | 金額や数量 | 保管場所や連絡先 |
---|---|---|---|
預貯金 | ハルノヒ銀行 ○○支店 普通預金 | 約○○円 | 通帳は寝室の引き出し |
不動産 | 自宅(土地・建物) | ○○市○○区1-2-3 | 権利証は金庫の中 |
有価証券 | △△証券(株、投資信託) | 約○○円 | 取引報告書は書斎のファイル |
生命保険 | □□生命 終身保険 | 死亡保険金○○円 | 保険証券はリビングの棚 |
負債 | 自動車ローン | 残高 約○○円 | 契約書は書斎のファイル |
4.1.2 遺言書の作成と準備
財産の分け方などについてご自身の希望がある場合は、法的な効力を持つ「遺言書」を作成しておくと安心です。遺言書があれば、ご自身の想いに沿った相続が実現しやすく、ご家族間の思わぬトラブルを防ぐことにもつながります。遺言書には、自分で手書きする「自筆証書遺言」や、公証役場で作成する「公正証書遺言」などがあります。書き方には法律上の決まりがあるので、不安な方は弁護士や司法書士といった専門家に相談するのも良い方法です。法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度もありますよ。
参考:法務省:自筆証書遺言書保管制度
4.1.3 相続税対策の検討
財産の総額によっては、相続するご家族に「相続税」がかかる場合があります。相続税には基礎控除額が定められており、それを超える部分に課税されます。生前贈与などを活用することで、ご家族の税負担を軽くできるケースもありますので、気になる方は税理士やファイナンシャルプランナーに一度相談してみることをおすすめします。
4.1.4 銀行口座や証券口座の整理
長い間使っていない銀行口座や証券口座はありませんか?管理が大変になるだけでなく、亡くなった後の手続きも煩雑になりがちです。これを機に使っていない口座は解約し、メインで使う口座をいくつか決めておくとすっきりします。どの金融機関に口座があるか、一覧にしておくだけでもご家族はとても助かります。
4.1.5 保険や年金の確認
加入している生命保険や医療保険について、保障内容や受取人が誰になっているかを改めて確認しておきましょう。保険証券をまとめて保管しておくと、いざという時にスムーズです。また、ご自身が受け取れる年金額を把握しておくことも大切です。日本年金機構の「ねんきんネット」などを活用すると、将来の年金見込額を手軽に確認できますよ。
参考:日本年金機構:ねんきんネット
4.2 医療や介護に関すること
もしもの時、ご自身が意思表示できなくなってしまったら…。そんな時に備えて、医療や介護に関する希望をあらかじめ伝えておくことは、ご自身の尊厳を守り、ご家族の判断の助けとなります。元気な今だからこそ、穏やかな気持ちで考えてみませんか。
4.2.1 希望する医療や延命治療の意思表示
人生の最期をどのように迎えたいか、延命治療を望むか望まないかなど、ご自身の考えをまとめておきましょう。これを「リビング・ウィル(尊厳死の宣言書)」として書面に残すこともできます。正解はありませんので、ご自身の価値観を大切に、希望を書き留めておくことが重要です。そして、その内容をご家族にも伝えておくと、いざという時の精神的な負担を大きく減らすことができます。
4.2.2 希望する介護施設や介護方針の決定
将来、介護が必要になった時、どこで、どのように過ごしたいですか?住み慣れた自宅で過ごしたいのか、専門のスタッフがいる施設に入りたいのか、ご自身の希望を考えてみましょう。もし施設を希望する場合は、特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、様々な種類があります。元気なうちに見学に行ってみるのも良いかもしれませんね。
4.2.3 かかりつけ医や持病の情報共有
かかりつけの病院や医師の名前、持病やアレルギーの有無、普段飲んでいるお薬の情報などを一覧にしておきましょう。お薬手帳の保管場所を家族に伝えておくだけでも十分です。緊急時に救急隊員や医師へ正確な情報を伝えることができ、迅速で適切な処置につながります。
4.3 葬儀やお墓に関すること
ご自身の人生の締めくくりとなるセレモニー。しめやかに行うのも、明るく見送ってもらうのも、すべてご自身の自由です。ご自身らしいお別れの形をイメージしてみるのも、前向きな終活のひとつです。

4.3.1 葬儀の形式や規模の希望
近年では、親しい人だけで行う「家族葬」や、儀式を簡略化した「直葬」など、葬儀の形も多様化しています。どのような規模で、誰を招きたいか、宗教・宗派はどうするかなど、希望を書き出してみましょう。好きだった音楽を流してほしい、祭壇は好きだったお花でいっぱいにしてほしい、といった希望も素敵ですね。
4.3.2 お墓や納骨方法の選択
従来のお墓だけでなく、樹木の下に眠る「樹木葬」や、海に還る「海洋散骨」、天候を気にせずお参りできる「納骨堂」など、供養の方法もさまざまです。お墓を継いでくれる人がいるかどうかも含めて、ご自身やご家族にとって一番しっくりくる方法を選びましょう。
4.3.3 遺影写真の準備
祭壇に飾られる遺影写真。ご家族が探すとなると、なかなか良い写真が見つからず苦労することもあります。ぜひ、ご自身が一番気に入っている、自分らしい表情の写真を一枚選んでおきませんか。写真館などでプロに撮影してもらう「生前遺影撮影」も人気です。旅先での笑顔の一枚なども素敵ですね。
4.3.4 参列してほしい人のリスト作成
訃報を誰に、どのように伝えてほしいか、連絡先リストを作成しておくと、ご家族の負担を大きく減らすことができます。お付き合いのあったご友人や遠い親戚など、ご家族が把握していない人間関係もあるかもしれません。名前と関係性、連絡先を書き留めておきましょう。
4.4 身の回りの整理(生前整理)
「生前整理」は、単なるお片付けではありません。持ち物と思いを整理することで、これからの暮らしをより身軽に、心地よくするためのステップです。残りの人生で本当に大切にしたいものが見えてくるかもしれません。

4.4.1 持ち物の整理と不用品の処分
衣類や本、食器、思い出の品々…。少しずつで良いので、整理を始めてみましょう。「使うもの」「使わないもの」「迷うもの」に分け、迷うものは一度別の箱に入れて保管してみるのも一つの手です。無理にすべてを捨てようとせず、ご自身の心と向き合いながら、感謝して手放すことが大切です。
4.4.2 デジタル遺品の整理(SNSアカウントやデータなど)
パソコンやスマートフォンの中にも、大切な情報がたくさん詰まっています。写真やメールのデータはもちろん、SNSのアカウント、ネット銀行の口座、月額課金のサービス(サブスクリプション)など、整理が必要な「デジタル遺品」は意外と多いものです。IDやパスワードを一覧にし、その保管場所と開示方法を信頼できるご家族にだけ伝えておくと安心です。
4.4.3 ペットの将来について
大切な家族の一員であるペット。もしご自身に万が一のことがあった時、その子のお世話を誰にお願いするか、あらかじめ決めておきましょう。お願いしたい相手には事前に相談し、承諾を得ておくことが何よりも重要です。ペットの種類やかかりつけの動物病院、好きな食べ物、性格などを詳しく書き留めておくと、引き継ぎがスムーズになります。
4.5 人間関係や伝えたいこと
終活は、事務的な手続きや整理だけではありません。これまでお世話になった方々や、愛するご家族へ、普段は照れくさくて言えない感謝の気持ちを伝える絶好の機会でもあります。
4.5.1 家族や友人へのメッセージ
「ありがとう」の言葉や、心に残っている思い出、伝えておきたい大切な想いを、手紙やメッセージとして残してみませんか。ビデオレターも素敵ですね。形に残すことで、あなたの想いは、あなたが旅立った後もずっとご家族の心を温め続けてくれるはずです。
4.5.2 大切な連絡先リストの作成
葬儀に参列してほしい人のリストとは別に、ご自身の交友関係がわかる連絡先リストを作っておくと、ご家族にとって大きな助けとなります。親しい友人や親戚、お世話になった方々の名前と連絡先をまとめておきましょう。年賀状のやり取りなどを参考にするのも良い方法です。
5. 初心者でも簡単 終活ノート(エンディングノート)の作り方
終活と聞いて、何から手をつければ良いか分からないと感じる方も多いのではないでしょうか。そんなときに、まず手に取っていただきたいのが「終活ノート(エンディングノート)」です。終活ノートは、ご自身の想いや情報を整理するための、いわば「自分だけの引き継ぎ書」。難しく考えずに、まずは一冊、お気に入りのノートを用意するところから始めてみませんか?市販されている専用のノートはもちろん、大学ノートやパソコンのファイルでも大丈夫。ご自身のペースで、自分らしい終活の第一歩を踏み出すための、素敵な時間になりますよ。

5.1 終活ノートと遺言書の違いを理解する
終活ノートとよく似たものに「遺言書」がありますが、この二つは役割が大きく異なります。違いをしっかり理解しておくことで、どちらも上手に活用できるようになりますよ。
一番大きな違いは、遺言書には法律上の効力がありますが、終活ノートにはないということです。財産の分け方など、法的に実現させたいことがある場合は、必ず法律で定められた形式で遺言書を作成する必要があります。
一方で、終活ノートは形式が自由。ご自身の想いや希望、家族へのメッセージなどを好きなように書き留めることができます。両方の良いところを活かして、遺言書で法的な備えをしつつ、終活ノートで細やかな希望や感謝の気持ちを伝えるのがおすすめです。
項目 | 終活ノート(エンディングノート) | 遺言書 |
---|---|---|
法的効力 | なし | あり |
形式 | 自由(市販ノート、大学ノート、デジタルデータなど) | 法律で定められた形式(自筆証書遺言、公正証書遺言など)がある |
書ける内容 | 制限なし(自分の情報、財産、医療、葬儀、メッセージなど) | 主に財産の相続や身分に関することなど、法律で定められた事項 |
目的 | 家族への情報伝達、想いを伝える、人生の振り返り | 相続トラブルの防止、法的に意思を実現させること |
遺言書の詳しい作り方については、法務局のウェブサイトも参考になります。
法務局:自筆証書遺言書保管制度について
5.2 終活ノートに書くべき基本的な項目
「さあ書こう!」と思っても、何から書けば良いか迷ってしまいますよね。ここでは、終活ノートに書いておくと安心な基本的な項目をご紹介します。すべてを一度に埋めようとせず、書けるところから少しずつ書き進めてみてくださいね。
5.2.1 自分の基本情報
まずは、ご自身の基本的な情報をまとめておきましょう。いざという時、さまざまな手続きで必要になる情報です。一か所にまとまっているだけで、ご家族の負担を大きく減らすことができます。
- 氏名、生年月日、血液型
- 本籍地、現住所
- マイナンバー
- 運転免許証やパスポート、健康保険証などの番号と保管場所
- 勤務先や所属団体などの情報
5.2.2 資産や契約に関する情報
お金に関する情報は、ご家族が最も把握しにくい部分です。後々のトラブルを避けるためにも、分かりやすく整理しておくことが大切ですよ。最近では、インターネット上の契約も増えているので、忘れずに記載しましょう。
- 預貯金口座(銀行名、支店名、口座番号)
- 有価証券(株式、投資信託など)
- 不動産(土地、建物)の情報
- 生命保険や損害保険などの契約内容と連絡先
- 年金の種類と受給に関する情報
- クレジットカードやローンの情報
- 携帯電話やインターネット、月額制サービス(サブスクリプション)などの契約情報
5.2.3 医療や介護の希望
もしものとき、どのような医療や介護を受けたいか。ご自身の意思をはっきりと示しておくことは、とても重要です。ご自身の尊厳を守ると同時に、判断を委ねられるご家族の心の負担を軽くすることにも繋がります。
- 延命治療を希望するかどうか
- 臓器提供や献体の意思
- 希望する介護場所(自宅、施設など)や介護の方針
- かかりつけ医や持病、アレルギー、服用中の薬の情報
- 告知(病名や余命など)を希望するかどうか
5.2.4 葬儀やお墓の希望
ご自身の人生の締めくくりについて、希望を伝えておくことも大切です。どのような形で見送られたいか、具体的に書いておくことで、ご家族も安心して準備を進めることができます。
- 希望する葬儀の形式(家族葬、一般葬、一日葬など)や規模
- 宗教・宗派に関する希望
- 遺影に使ってほしい写真の指定と保管場所
- お墓の種類(一般墓、樹木葬、納骨堂など)や納骨方法(散骨など)の希望
- 葬儀に参列してほしい人の連絡先リスト
- 棺に入れてほしいもの
5.2.5 家族や大切な人へのメッセージ
終活ノートは、事務的な情報を伝えるだけのツールではありません。ご家族やご友人、お世話になった方々へ、普段は照れくさくて言えない感謝の気持ちや、伝えたい想いを綴るための大切な場所です。あなたの言葉が、残された方々の心を温め、これからの人生を支える宝物になるかもしれません。思い出話や、ちょっとしたお願いごとなどを、あなたらしい言葉で自由に書いてみてくださいね。大切なペットがいる方は、その子のお世話をお願いするメッセージも忘れずに書きましょう。
5.3 終活ノートの保管場所と家族への伝え方
心を込めて書いた終活ノートも、いざという時に見つけてもらえなければ意味がありません。保管場所と、その場所を家族に伝えておくことがセットで重要になります。
保管場所は、ご家族が分かりやすく、かつ安全な場所がおすすめです。例えば、書斎の鍵付きの引き出しや、いつも使っている棚の中などが良いでしょう。ただし、貸金庫など厳重すぎる場所に保管すると、必要な時にすぐに確認できない場合もあるため注意が必要です。
そして何よりも大切なのが、終活ノートの存在と保管場所を、信頼できるご家族に普段から伝えておくことです。「大事なことを書いたノートがあるから、もしもの時はここを見てね」と、さりげなく話しておくのが理想的ですね。直接話すのが気恥ずかしい場合は、信頼できるご友人や専門家(弁護士など)に伝言を頼んでおくという方法もあります。大切なのは、あなたの想いがきちんと届くように、道筋をつけておくことです。
6. 終活を進める上での注意点と相談先
終活は、これからの人生をより自分らしく、晴れやかに過ごすための素敵な準備です。でも、いざ始めようとすると、何から手をつけていいか迷ったり、専門的なことが分からなくて不安になったりすることもあるかもしれませんね。大切なのは、一人ですべてを抱え込まないこと。ここでは、終活をスムーズに進めるための大切な心構えと、頼れる相談先についてご紹介します。
6.1 家族としっかり話し合いながら進める
終活はご自身のためであると同時に、遺される大切なご家族のためでもあります。だからこそ、ご自身の想いや希望を家族と共有しながら進めることが、何よりも大切です。
「終活」という言葉を切り出すのは、少し勇気がいるかもしれません。そんなときは、「この先のことを少し考えていてね」「もしものとき、みんなが困らないように準備しておきたくて」といったように、ご家族を思いやる気持ちから伝えてみてはいかがでしょうか。誕生日や記念日、お子さまの独立といった人生の節目も、自然な会話のきっかけになりますよ。
一方的に希望を伝えるだけでなく、ご家族の意見にも耳を傾けることで、お互いの理解が深まり、無用なトラブルを避けることにもつながります。あなたの想いが詰まった終活が、ご家族にとっても心安らぐ贈り物になるように、ぜひ対話の時間を大切にしてくださいね。
6.2 一人で悩まず専門家に相談する
終活には、遺言や相続、税金といった、法律やお金に関する専門的な知識が必要になる場面も少なくありません。そんなとき、一人で悩んでしまうと、時間も手間もかかってしまいがちです。難しいと感じたら、それぞれの分野の専門家の力を借りるのが安心への近道です。客観的なアドバイスをもらうことで、ご自身では気づかなかった視点が見つかることもあります。
ここでは、終活の場面で頼りになる主な専門家とその役割をご紹介します。どこに相談すれば良いか迷ったときの参考にしてくださいね。
専門家 | こんな方におすすめ | 主な相談内容 |
---|---|---|
弁護士・司法書士 | 法的に有効な遺言書を確実に作りたい方、相続で揉め事が起きないか心配な方 | 遺言書の作成(特に公正証書遺言)、相続手続き、遺産分割協議、成年後見制度の申し立てなど |
行政書士 | 比較的費用を抑えて、遺言書や各種書類の作成をサポートしてほしい方 | 遺言書の文案作成、遺産分割協議書の作成、尊厳死宣言書や死後事務委任契約書の作成など |
ファイナンシャルプランナー | 老後資金や資産全体について、お金の面から総合的に相談したい方 | 資産の棚卸し、保険の見直し、年金や退職金の活用法、相続税のシミュレーションなど |
どこに相談すれば良いか分からない場合は、市役所や区役所の無料相談窓口や、お近くの法テラス(日本司法支援センター)、日本FP協会などに問い合わせてみるのもおすすめです。初回の相談を無料で行っている事務所も多いので、気軽に連絡してみてはいかがでしょうか。
6.2.1 弁護士や司法書士
弁護士や司法書士は、法律の専門家です。特に、法的な効力を持つ「遺言書」の作成や、相続に関する手続きで頼りになります。財産が多い場合や、相続人の関係が複雑で将来トラブルになる可能性が考えられる場合は、相談しておくと安心です。弁護士は代理人として交渉や訴訟もできますが、司法書士は書類作成や登記手続きが中心となります。ご自身の状況に合わせて選びましょう。
6.2.2 行政書士
行政書士は、「街の法律家」とも呼ばれる書類作成のプロフェッショナルです。遺言書の原案作成のサポートや、家族間の話し合いをまとめた「遺産分割協議書」の作成などを依頼できます。弁護士や司法書士に比べて、比較的費用を抑えて相談できることが多いのも特徴です。
6.2.3 ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー(FP)は、暮らしにまつわるお金の専門家です。預貯金や不動産、保険、年金といったご自身の資産全体を把握し、今後のライフプランに合わせたアドバイスをしてくれます。相続税がどのくらいかかるか心配なときや、残りの人生を豊かに過ごすためのお金の使い方を考えたいときに、心強い味方となってくれるでしょう。
6.3 一度に完璧を目指さない
終活でやることは多岐にわたるため、「全部やらなければ」と気負ってしまうと、途中で疲れてしまうかもしれません。大切なのは、一度にすべてを完璧にやろうとしないことです。
終活は、マラソンのようなもの。まずは「今日は引き出しを一つだけ片付けよう」「大切な人の連絡先を書き出してみよう」など、すぐにできそうなことから始めてみませんか。一つひとつ進めていくうちに、気持ちも整理されていくはずです。
また、ご自身の気持ちや家族の状況は、時とともに変わっていくものです。一度決めたことでも、年に一度は見直しの時間をつくるなど、柔軟に対応していきましょう。焦らず、ご自身のペースで、楽しみながら進めていくことが、自分らしい終活をかなえる一番の秘訣ですよ。
7. まとめ
終活は、人生の終わりに向けての準備というだけでなく、ご自身のこれまでを愛おしみ、これからの時間をより「わたしらしく」輝かせるための大切な活動です。家族への思いやりはもちろん、ご自身の希望を形にすることで、心穏やかな毎日へと繋がります。何から始めるか迷ったら、まずは一冊の終活ノートを開いてみませんか。完璧を目指さず、ご自身のペースで。その一歩が、未来の安心と、今を豊かにするきっかけになるはずです。
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