初天神とは?落語や全国の神社(天満宮)についても解説

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新しい年の始まりに耳にする「初天神」とは、1月25日に行われる、学問の神様・菅原道真公を祀る天満宮の新年最初の縁日のことです。この記事では、初天神の由来や学業成就などのご利益から、有名な落語のあらすじ、全国の天満宮の見どころまで詳しく解説します。鷽替え神事や屋台といった当日の楽しみ方もご紹介しますので、お子さんやお孫さんの合格祈願や、新しい年の目標達成を願って、清々しい気持ちで参拝してみませんか。

目次

1. 初天神とは 1月25日に行われる天神様の縁日

新しい年が始まり、清々しい気持ちで過ごす1月。この時期に迎える「初天神(はつてんじん)」という日をご存知でしょうか。初天神とは、毎年1月25日に行われる、その年最初の天神様の縁日のことです。全国各地の天満宮(天神社)では、多くの参拝者で賑わい、境内は特別な活気に満ちあふれます。

「縁日」とは、神様や仏様と人々とのご縁が深まるとされる特別な日のこと。その中でも「初天神」は、年に一度、年の初めに天神様とご縁を結ぶ大切な日として、古くから親しまれてきました。ちょうど受験シーズンと重なることもあり、合格を願う学生さんやそのご家族の姿も多く見られる、希望に満ちた一日です。

1.1 初天神の由来は菅原道真公の誕生日と命日

初天神の「天神様」とは、平安時代の優れた学者であり、政治家でもあった学問の神様として広く知られる菅原道真公(すがわらのみちざねこう)のことです。では、なぜ毎月「25日」が天神様の縁日となったのでしょうか。その理由は、道真公の生涯をたどると見えてきます。

実は、道真公にまつわる日付が「25日」に集中しているのです。この不思議なご縁から、「25日」は道真公と縁の深い日とされ、毎月の縁日となりました。そして、一年で最初の縁日である1月25日が「初天神」と呼ばれるようになったのですね。

出来事日付
お生まれになった日(誕生日)承和12年(845年)6月25日
お亡くなりになった日(命日)延喜3年(903年)2月25日
大宰府へ左遷される詔が出された日延喜元年(901年)1月25日

道真公は、その類まれなる才能を妬まれ、無実の罪で京都から遠い太宰府(現在の福岡県)へと左遷されてしまいました。その地で失意のうちに亡くなられた後、都では雷や疫病といった災いが続いたため、人々は道真公の祟りだと恐れ、その御霊を鎮めるために天神様としてお祀りするようになったのが天神信仰の始まりとされています。

1.2 初天神のご利益は学問成就や厄除け

菅原道真公が生前、大変優れた学者・歌人であったことから、天神様は「学問の神様」として篤い信仰を集めています。そのため、初天神にお参りするといただけるご利益として、学問成就や合格祈願のご利益が最も有名です。お孫さんやご家族の試験合格を願って、熱心にお祈りされる方の姿は、この時期の風物詩ともいえるでしょう。

また、天神信仰の始まりが道真公の御霊を鎮めることからであったため、厄除けや災難除けのご利益も授かれるとされています。新しい一年の始まりに、災いがなく平穏無事に過ごせるよう、家族の幸せを願うのも素敵ですね。その他にも、道真公が優れた文化人であったことから、書道や和歌などの芸事上達を願う方々にも親しまれています。

2. 落語の演目「初天神」のあらすじを紹介

「初天神」と聞くと、落語の演目を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんね。江戸落語の演目の一つで、親子の微笑ましいやり取りが目に浮かぶような、人気の高い滑稽噺(こっけいばなし)です。聞いているだけで心が温かくなる、そんな「初天神」の物語をのぞいてみましょう。

2.1 主な登場人物

物語を彩るのは、こちらの二人。どこにでもいそうな親子の姿が、このお話の魅力でもあります。

登場人物どのような人?
父親息子の金坊を連れて初天神へ。少し見栄っ張りで、子どもっぽい一面も持っています。
金坊(きんぼう)父親と一緒にお参りに行く元気な男の子。目に入るものすべてに興味津々です。

2.2 親子のやり取りが微笑ましい「初天神」の物語

お正月の賑わいも少し落ち着いた頃。父親が息子の金坊(きんぼう)を連れて、初天神にお参りに行くところから物語は始まります。

2.2.1 お参りの約束と、道中の誘惑

父親は金坊に「今日は何も買ってやらないぞ」と固く言い聞かせて家を出ます。しかし、天神様への道中は、子どもにとって魅力的なものでいっぱい。凧(たこ)や飴、おもちゃなど、楽しそうなものが次々と目に飛び込んできます。

そのたびに金坊は「お父ちゃん、あれ買って!」とおねだり。父親は「あれはなあ…こんにゃくだ」「あれは毒だ」などと苦しい嘘をついて、なんとかその場をしのいでいきます。無邪気におねだりする金坊と、必死にごまかす父親の姿がなんともおかしく、愛らしい場面です。

2.2.2 団子屋での攻防と、とんちの効いた一言

たくさんの誘惑を乗り越え、ようやく天神様の境内へ。お参りを済ませてほっとした父親は、屋台の団子屋に目をつけます。「金坊に隠れて、自分だけこっそり食べよう」と考えたのです。

ところが、おいしそうに団子をほおばっているところを、目ざとく金坊に見つかってしまいます。「お父ちゃん、それなあに?」と聞かれた父親は、道中と同じように「これはこんにゃくだ。体に悪いから子どもの食べるもんじゃない」と、またしても嘘をつきます。

納得のいかない金坊は、大声で泣き出してしまいました。周りの目も気になり、根負けした父親は「しょうがないなあ、一本だけだぞ」と団子を渡します。すると、さっきまで泣いていた金坊はにっこり。団子をぱくっと食べると、こう言いました。

「お父ちゃん、こんにゃくは体にいいなあ」

子どもの純粋でとんちの効いた一言に、父親も観客も思わず笑ってしまう、というのがこのお話のオチ(サゲ)です。親子の愛情あふれる一日を描いた「初天神」は、今も昔も多くの人に愛され続けている名作なのです。

3. 初天神で有名な全国の天満宮

菅原道真公をお祀りする天満宮や天神社は、全国に1万2000社以上あるといわれています。その中でも、特に初天神の日に多くの人々で賑わう、由緒ある神社をいくつかご紹介しますね。新しい一年の始まりに、お近くの天神様へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

3.1 【京都】北野天満宮

北野天満宮

京都にある北野天満宮は、福岡の太宰府天満宮と並び、全国の天満宮の総本社として知られています。地元の方からは親しみを込めて「天神さん」と呼ばれています。

毎月25日の縁日は「天神市」として有名ですが、一年の最初の縁日である「初天神」は、ひときわ盛大で、境内から周辺一帯まで数多くの露店が立ち並びます。骨董品や古着、植木、そして美味しそうな食べ物の屋台など、見ているだけでも心が躍りますよ。また、境内では学問の神様ならではの「筆始祭(ふではじめさい)」も行われ、書道の上達を願う人々で賑わいます。

項目内容
所在地京都府京都市上京区馬喰町
アクセスJR京都駅から市バス50・101系統で「北野天満宮前」下車すぐ
公式サイト北野天満宮 公式サイト

3.2 【東京】亀戸天神社

亀戸天神社

東京の亀戸天神社は、九州の太宰府天満宮にならって建立されたことから「東宰府天満宮」とも呼ばれています。学問の神様としてのご利益はもちろん、藤や梅の名所としても都民に愛されている場所です。

初天神の日には、前年までの悪い出来事を「うそ」にして、新年の幸運を招くといわれる「鷽(うそ)替え神事」が執り行われます。木彫りの鳥「鷽」を求め、早朝から多くの方が列を作る光景は、新年の風物詩となっています。境内では梅の花も咲き始め、一足早い春の訪れを感じさせてくれますよ。

項目内容
所在地東京都江東区亀戸3丁目6-1
アクセスJR総武線「亀戸駅」北口より徒歩約15分 / JR総武線・東京メトロ半蔵門線「錦糸町駅」北口より徒歩約15分

3.3 【東京】湯島天満宮(湯島天神)

湯島天満宮(湯島天神)

「湯島天神」の愛称で親しまれている湯島天満宮も、関東を代表する天満宮のひとつです。特に学問成就のご利益で名高く、受験シーズンには多くの学生やそのご家族が合格祈願に訪れます。

初天神は大学入学共通テストの直後ということもあり、境内は一年で最も賑わう時期。お参りする方々の熱心な祈りと、奉納された無数の絵馬が、独特の緊張感と希望に満ちた雰囲気を生み出しています。こちらでも「鷽替え神事」が行われ、縁起物の木彫りの鷽を求めることができます。境内では物産展なども開かれ、参拝後のお楽しみもたくさんあります。

項目内容
所在地東京都文京区湯島3丁目30-1
アクセス東京メトロ千代田線「湯島駅」3番出口より徒歩約2分 / 東京メトロ銀座線「上野広小路駅」A4出口より徒歩約5分
公式サイト湯島天満宮 公式サイト

3.4 【福岡】太宰府天満宮

太宰府天満宮

菅原道真公が晩年を過ごされ、その御墓所の上に社殿が造営されたという、まさに天神信仰の聖地です。京都の北野天満宮とともに、全国の天満宮の総本社とされています。

初天神の時期には、特別な神事が執り行われます。中でも1月7日の夜に行われる「鬼すべ神事」は、燻ぶされた堂内で鬼を追い払う勇壮な火祭りとして知られ、一年の厄を払ってくれます。また、初天神の日には「鷽替え神事」も行われ、多くの参拝者で賑わいます。参道でいただく名物の「梅ヶ枝餅」も、参拝の楽しみのひとつですね。

項目内容
所在地福岡県太宰府市宰府4丁目7-1
アクセス西鉄太宰府線「太宰府駅」より徒歩約5分
公式サイト太宰府天満宮 公式サイト

3.5 【大阪】大阪天満宮

大阪天満宮

「天満の天神さん」と呼ばれ、大阪の街で古くから親しまれている大阪天満宮。日本三大祭りのひとつに数えられる「天神祭」は全国的にも有名です。

初天神の日には、一年の幸運を願う「うそかえ神事」が行われるほか、書道の上達を祈願する「筆まつり(ふでまつり)」も開催されます。この日には、一年間お世話になった古い筆を納める「古筆焼納(こひつしょうのう)」が行われ、多くの人が愛用の筆に感謝を捧げます。学問の神様らしい、心静かになる神事ですね。

項目内容
所在地大阪府大阪市北区天神橋2丁目1-8
アクセスJR東西線「大阪天満宮駅」より徒歩約5分 / Osaka Metro谷町線・堺筋線「南森町駅」より徒歩約5分
公式サイト大阪天満宮 公式サイト

4. 初天神の楽しみ方 参拝方法や縁起物

一年の始まりに訪れる初天神は、清らかな気持ちで参拝するだけでなく、この日ならではの楽しみがたくさんあります。学問の神様である菅原道真公にちなんだ特別な神事や縁起物、そして心躍る縁日の賑わい。ここでは、初天神をより深く味わうための楽しみ方をご紹介します。新しい一年の幸せを願いながら、心温まるひとときを過ごしてみませんか。

4.1 鷽(うそ)替え神事とは

初天神の行事の中でも特に有名なのが、「鷽(うそ)替え神事」です。少し難しい漢字ですが、「うそ」という鳥にちなんだ、とても縁起の良い神事なのですよ。

この神事は、「これまでにあった良くない出来事を“嘘(うそ)”にして、新しく“誠(まこと)”に取り(鳥)替える」という願いが込められています。「鷽」という鳥が幸運を招く鳥とされていることからの習わしです。多くの天満宮では、災いを良いことに替えてくれるという木彫りの「木鷽(きうそ)」を授かることができます。一年間お守りとして大切にし、翌年の初天神で新しい木鷽と取り替えるのが慣わしとなっています。

特に東京の亀戸天神社や福岡の太宰府天満宮の鷽替え神事は大変有名で、毎年多くの方が新しい木鷽を求めて訪れます。一年間の悪いことを嘘にして、幸運を呼び込む。そんな素敵な願いを込めて、参加してみてはいかがでしょうか。

4.2 合格祈願の絵馬や学業成就のお守り

初天神が斎行される1月25日は、ちょうど受験シーズン真っ只中です。そのため、境内はお孫さんやご家族の合格を願う人々で、あたたかな祈りに満ちています。

学問の神様である道真公に願いを届けるため、心を込めて絵馬を奉納しましょう。絵馬には合格祈願だけでなく、資格取得や習い事の上達など、学びに関するさまざまな願い事を書くことができます。新しい年に何かを学び始めたいと考えている方にもぴったりですね。

また、この時期にしか手に入らない特別なお守りを授かるのも楽しみの一つです。学業成就を願うお守りはもちろん、中には鉛筆や鉢巻をかたどったユニークなものも。ご自身の目標達成や、大切な方への贈り物として、心強いお守りを選んでみるのも素敵です。

4.3 縁日で賑わう屋台や露店

参拝を終えた後の、もう一つのお楽しみが縁日です。初天神の境内やその周辺には、たくさんの屋台や露店が立ち並び、お祭りのような活気に包まれます。

たこ焼きや焼きそばといった定番の味に心惹かれたり、甘い香りのりんご飴やベビーカステラに思わず笑みがこぼれたり。懐かしい縁日の味を楽しみながら散策する時間は、心も体もぽかぽかと温めてくれます。

神社によっては、その土地ならではの名物が並ぶこともあります。例えば、太宰府天満宮の参道でいただく焼きたての「梅ヶ枝餅」は格別です。また、京都の北野天満宮のように骨董市(天神市)が同時に開かれる場所もあり、思わぬ掘り出し物との出会いも期待できます。活気あふれる縁日の賑わいを感じながら、特別な一日を締めくくるのも良いものですね。

5. まとめ

この記事では、初天神の由来から楽しみ方までご紹介しました。1月25日は、学問の神様・菅原道真公の誕生日と命日にちなんだ、一年の最初の特別な縁日です。そのため、学問成就や厄除けのご利益もひとしおとされています。北野天満宮や太宰府天満宮をはじめ、全国の天満宮では「鷽替え神事」や屋台で賑わい、落語「初天神」もこの日の風物詩。清らかな気持ちで天神様にお参りし、心穏やかな一年を願ってみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

ハレノヒ編集部は、「わたしらしく、身軽に暮らす」をテーマに、日々の暮らしを前向きに楽しむためのヒントをお届けしています。
美容や健康、趣味、暮らしの工夫など、50代以降の女性を中心に、誰もが自分らしく輝けるような情報をやさしい目線で発信しています。
ちょっと気になる話題や、ふと心に残る言葉も添えて、皆さまの毎日が少し晴れやかになりますように。

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