「花冷え」の意味は?時期はいつからいつまで?使い方や例文も

桜の美しい季節、ふと感じる肌寒さを「花冷え」といいますね。この言葉、いつ頃使えて、どんな風に会話に取り入れたら良いのでしょう。この記事では、「花冷え」の正しい意味や使う時期、時候の挨拶や日常会話での上手な使い方を例文を交えて丁寧にご案内します。花冷えの時期の服装や体調管理のコツも分かりますので、季節の変わり目を健やかに、そして言葉の知識を深めて心豊かにお過ごしいただけますよ。

目次

1. 花冷えとは その意味をわかりやすく解説

ようやく訪れた春。うららかな陽気に心も軽やかになり、桜の便りが待ち遠しい季節ですね。満開の桜の下でのお花見は、日本の春ならではの楽しみの一つではないでしょうか。しかし、そんな桜が咲き誇る美しい時期に、思いがけず肌寒さを感じることがあります。この現象を指す風情ある言葉が「花冷え(はなびえ)」です。

「花冷え」とは、桜の花が咲く頃に、一時的に気温が下がり、まるで冬に逆戻りしたかのような寒さを感じることを言います。ぽかぽかと暖かい日が続いていたのに、急に空気がひんやりとして、羽織るものが欲しくなるような状況を思い浮かべていただくと分かりやすいかもしれませんね。

この言葉に含まれる「花」とは、主に「桜」を指します。古来より日本人に愛されてきた桜は、春の象徴であり、その開花は多くの人にとって特別なものです。その桜が咲く大切な時期に訪れる寒さだからこそ、「花冷え」という美しい名前で呼ばれるようになったのでしょう。

「冷え」という言葉が示す通り、暖かさに慣れてきた体には少々こたえる寒さですが、どこか趣があり、日本語の繊細な表現力を感じさせてくれる言葉でもあります。ただ、この美しい言葉の響きとは裏腹に、体調を崩しやすい時期でもありますので、油断は禁物です。うっかり薄着で過ごしてしまうと、風邪をひいてしまうことも。花冷えの時期は、その美しい響きを楽しみつつも、暖かくしてお過ごしくださいね。

2. 花冷えの時期はいつからいつまで?

春の訪れとともにやってくる「花冷え」。美しい桜の季節に、ふと肌寒さを感じるこの現象は、一体いつ頃に起こるのでしょうか。ここでは、花冷えの時期について、桜の開花との関係や地域による違いを詳しく見ていきましょう。

2.1 桜の開花時期と花冷えの関係

「花冷え」という言葉が示す通り、この現象は桜の花が咲く時期に深く関係しています。一般的に、桜(特にソメイヨシノ)の開花は3月下旬から4月にかけて見られますが、この頃に一時的に気温が下がり、まるで冬に逆戻りしたかのような寒さを感じることがあります。これが花冷えです。

春一番が吹き、暖かな日差しに心躍る季節ですが、移動性高気圧と低気圧が日本付近を交互に通過することで天候が不安定になりやすく、時折、北からの寒気が流れ込むことで気温がぐっと下がることが原因とされています。ですから、桜の開花予想と同じように、花冷えの時期もその年の気候や桜前線の動きによって少しずつ変動します。お花見の計画を立てる際には、この「寒の戻り」も考慮に入れておくと安心ですね。

2.2 地域によって異なる花冷えの時期

日本は南北に長い列島ですから、桜の開花時期も地域によって大きく異なります。それに伴い、花冷えが訪れる時期も地域差があるのが特徴です。南の地域から徐々に桜前線が北上していくのに合わせて、花冷えのタイミングも移り変わっていきます。

下の表は、主な地域の桜の見頃と、それに伴う花冷えの時期の目安です。お住まいの地域やお出かけ先の参考にしてみてくださいね。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、その年の気象条件によって変動しますので、最新の天気予報もあわせてご確認ください。

地域桜の見頃(目安)花冷えの時期(目安)
沖縄・奄美1月下旬~2月上旬(桜の時期の寒の戻りとして)2月頃
九州南部(鹿児島県・宮崎県など)3月中旬~下旬3月下旬頃
九州北部・四国地方・中国地方3月下旬~4月上旬3月下旬~4月上旬頃
関東地方・東海地方・近畿地方3月下旬~4月上旬3月下旬~4月上旬頃
甲信地方・北陸地方4月上旬~中旬4月上旬~中旬頃
東北地方南部4月上旬~中旬4月上旬~中旬頃
東北地方北部4月中旬~下旬4月中旬~下旬頃
北海道(道南地方)4月下旬~5月上旬4月下旬~5月上旬頃
北海道(道央地方・道東地方)5月上旬~中旬5月上旬~中旬頃

桜の開花状況については、気象庁の「さくらの開花状況」なども参考に、お住まいの地域の情報を確認するとよいでしょう。美しい桜の季節を、体調を崩さずに楽しむためにも、花冷えの時期を意識して、暖かくしてお過ごしくださいね。

3. 花冷えの正しい使い方と具体的な例文集

「花冷え(はなびえ)」という言葉、耳にするとなんだか風情があって、春の情景が目に浮かびますね。でも、いざ使おうとすると「どんな時に使うのが正しいの?」「時候の挨拶にも使えるかしら?」と迷うこともあるかもしれません。ここでは、花冷えという言葉の正しい使い方と、日々の暮らしの中で役立つ具体的な例文をたくさんご紹介します。この機会に覚えて、季節感あふれる言葉遣いを楽しみましょう。

3.1 花冷えを使った時候の挨拶例文

手紙やメールの書き出しで季節の言葉を添えると、ぐっと丁寧で心のこもった印象になりますね。「花冷え」は、桜の咲く時期の時候の挨拶として使うのにぴったりの言葉です。相手の健康を気遣う一言を添えるのも素敵ですよ。

場面例文
改まった手紙やビジネスメールの冒頭花冷えの候、皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
一般的な手紙やメールの冒頭花冷えの折から、いかがお過ごしでしょうか。 桜の便りが聞かれる頃となりましたが、あいにくの花冷えに驚いております。
手紙やメールの結び花冷えのみぎり、くれぐれもご自愛くださいませ。 花冷えの季節、どうぞお風邪など召されませぬよう、暖かくしてお過ごしください。
親しい方への手紙やメールうららかな春の日差しが待ち遠しい今日この頃ですが、まだ花冷えの日が続いていますね。お変わりありませんか。 満開の桜も、この花冷えには少し震えているようです。暖かくして、春を楽しみましょうね。

時候の挨拶で「花冷え」を使う際は、相手の住む地域の気候も考慮すると、より心遣いが伝わるでしょう。例えば、すでに暖かい日が続いている地域の方へ送る場合は、少し言葉を調整すると良いですね。

3.2 会話や文章での花冷えの使い方

「花冷え」は、時候の挨拶だけでなく、日常の会話やブログ、SNSなどでも気軽に使える便利な言葉です。使うことで、春先の肌寒さを情緒豊かに表現できますよ。

例えば、こんな風に使ってみてはいかがでしょうか。

  • 「今日はせっかく桜が満開なのに、花冷えで少し肌寒いですね。羽織るものを持ってきて正解でした。」
  • 「この週末はお花見の予定だけれど、天気予報によると花冷えが心配だわ。暖かい飲み物でも持っていこうかしら。」
  • (お友達との電話で)「そちらも今日は花冷え?こちらは朝から曇り空で、桜も寒そうにしているわよ。」
  • (ブログやSNSの投稿で)「近所の公園の桜が見頃を迎えました!でも、今日はあいにくの花冷え。お出かけの際は、一枚多めに羽織ってくださいね。」
  • 「昨日はあんなに暖かかったのに、今日は花冷えに逆戻りですね。体調を崩さないように気をつけましょう。」

このように、お天気の話や体調を気遣う言葉と組み合わせると、自然で優しい印象になります。美しい桜と、その時期に訪れる一時的な寒さという対比が、「花冷え」という言葉の持つ独特の風情を引き立てます。

3.3 花冷えを使う際の注意点

「花冷え」は美しい響きを持つ言葉ですが、使う際にはいくつか心に留めておきたい点があります。正しく理解して、より適切に使いこなしましょう。

  • 使う時期は桜の咲く頃に限定されます。「花」とは主に桜を指すため、桜が咲き誇る時期の寒の戻りに使うのが一般的です。梅や桃の花が咲く頃の寒さや、桜が散って葉桜になった後の寒さには、通常「花冷え」という言葉は使いません。
  • 単に「寒い日」というだけでは「花冷え」とは言いません。「桜の季節なのに(または、桜が咲いているのに)寒い」というニュアンスが含まれています。春先の、期待していた暖かさとは異なる一時的な寒さを指す言葉です。
  • 「花冷え」は春の言葉です。秋の肌寒さや冬の厳しい寒さには使わないようにしましょう。それぞれの季節には、その時期の寒さを表す別の言葉があります。
  • 相手に寒さを気遣う言葉として使う場合は、相手の状況や気持ちに寄り添う表現を心がけると、より温かいコミュニケーションにつながります。「花冷えで大変ですね」というよりも、「花冷えですので、どうぞ暖かくしてお過ごしください」のように、相手を思いやる一言を添えると良いでしょう。

これらの点に気をつけることで、「花冷え」という言葉をより豊かに、そして相手に心地よく伝えられるようになりますよ。

4. 花冷えの時期の気温と服装選びのポイント

春爛漫の季節にもかかわらず、思わぬ寒さに見舞われる「花冷え」。この時期を心地よく過ごすためには、気温の特徴を理解し、適切な服装を選ぶことが大切です。ここでは、花冷えの時期の気温と、上手な服装選びのポイントをご紹介しますね。

4.1 花冷えの日の気温の特徴

花冷えの時期は、一日のなかでの気温差が大きいのが特徴です。日中はポカポカと暖かく感じられても、朝晩はぐっと冷え込むことがよくあります。また、昨日まで暖かかったのに、今日は急に肌寒いといったように、日によって気温が大きく変動することもあります。

桜が咲き始める頃は、まだ冬の寒さが残り、大陸からの冷たい空気が流れ込みやすい時期でもあります。そのため、「春だから大丈夫」と油断していると、思わぬ寒さに体調を崩してしまうことも。天気予報をこまめにチェックして、その日の気温に合わせた準備を心がけましょう。

4.2 花冷え対策におすすめの服装

気温の変化に対応しやすい服装が、花冷えの時期を快適に過ごすための鍵となります。「重ね着」を基本に、着脱しやすいアイテムを選ぶのがおすすめです。

4.2.1 基本の考え方:重ね着で温度調節

花冷えの時期は、簡単に羽織ったり脱いだりできるアイテムを一枚プラスするだけで、体感温度を大きく調整できます。日中の暖かさには軽装で、朝晩の冷え込みや風が強い時にはさっと羽織る、といった具合ですね。

4.2.2 花冷え対策に役立つアイテム例

具体的にどのようなアイテムが役立つのか、いくつかご紹介しますね。

アイテムの種類選び方のポイントと活用法
薄手のコートやジャケットスプリングコート、トレンチコート、カーディガンジャケットなどがおすすめです。軽くて持ち運びしやすいものを選ぶと、日中暑くなった時に便利です。裏地のないものや、薄手のウール素材も良いでしょう。
ストールやスカーフ首元を温めるだけで、体感温度がぐっと上がります。シルクやコットンのような肌触りの良い素材や、少し厚手のウール混のストールなど、気温に合わせて使い分けられるよう何枚か持っていると重宝します。バッグに忍ばせておけば、急な冷え込みにも安心ですね。
カーディガンやベストコートの中に着込んだり、ブラウスの上に羽織ったりと、中間着として非常に優秀です。ウールやカシミヤ混のものは薄手でも暖かく、着ぶくれしにくいのでおすすめです。前開きのものなら着脱も楽です。
機能性インナー薄手でも保温効果の高いインナーは、花冷えの強い味方です。吸湿発熱素材や、汗をかいても冷えにくい素材などを選ぶと、見えないところでもしっかりと寒さ対策ができます。七分袖や長袖など、上に着るものに合わせて調整しましょう。

4.2.3 服装選びで気をつけたいこと

花冷えの時期は、「首」「手首」「足首」の三首を冷やさないように心がけることも大切です。これらの部分は皮膚が薄く、太い血管が通っているため、冷えを感じやすい場所です。ストールで首元を、長めの袖や手袋で手首を、靴下やレッグウォーマーなどで足首を保護すると、効率よく体を温めることができます。

また、お出かけ前には必ず天気予報で最高気温だけでなく、最低気温や風の強さも確認しましょう。雨が降ると体感温度はさらに下がりますので、雨具の準備も忘れずに。せっかくのお花見シーズン、体調を万全にして楽しみたいものですね。

5. 花冷えの時期の体調管理 気をつけること

春の訪れは心弾むものですが、「花冷え」と呼ばれる時期の急な気温の変化は、私たちの体に思いがけない影響を与えることがあります。桜が咲き誇る美しい季節を健やかに楽しむために、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。ここでは、花冷えの時期を心地よく過ごすための体調管理のポイントを、具体的にご紹介しますね。

5.1 花冷えの時期に注意したい体調変化

「三寒四温」という言葉があるように、春は暖かい日と寒い日が交互にやってくる、気温が不安定な季節です。特に花冷えの時期は、日中はポカポカと暖かくても、朝晩はぐっと冷え込むなど、一日の間でも気温差が大きくなりがちです。このような気温の大きな変動は、私たちの体の調子を整える自律神経に負担をかけてしまうことがあります。自律神経のバランスが乱れると、心身に様々な不調が現れやすくなるのです。

具体的には、次のような体調の変化に気づいたら、少し注意が必要かもしれません。

  • なんだか風邪をひきやすい:気温差によって体の抵抗力が弱まり、ウイルスや細菌の影響を受けやすくなることがあります。
  • 体がだるい、疲れがとれない:自律神経がうまく働かないと、体が休息モードに切り替わりにくく、疲労感が残りやすくなります。
  • 頭痛や肩こりが気になる:寒さで血管が収縮し血行が悪くなったり、気圧の変化が影響したりすることも考えられます。
  • なんとなく気分が晴れない、落ち込みやすい:春先の気候の変化や日照時間の変動、寒暖差によるストレスなどが、心の状態に影響を与えることもあります。
  • 手足の冷えや胃腸の不調:体が冷えることで、手足の末端だけでなく、お腹の調子が悪くなるなど、内臓の働きにも影響が出ることがあります。

これらのサインは、体が「少し休んでね」と教えてくれているのかもしれません。早めに気づいて、ご自身をいたわってあげることが大切ですよ。

5.2 花冷えの時期の健康管理術

花冷えの時期を元気に、そして笑顔で乗り切るためには、毎日の生活習慣を見直し、体を大切にすることが何よりも重要です。ここでは、今日からできる簡単な健康管理術をいくつかご紹介しますね。

5.2.1 1. 体を温める食事を意識する

毎日の食事に、体を内側から温めてくれる食材を上手に取り入れましょう。例えば、お料理に生姜やネギ、ニンニクなどの薬味を加えたり、大根や人参、ごぼうといった根菜類を積極的に摂るのがおすすめです。また、体の抵抗力をサポートするためには、ビタミンCが豊富な柑橘類やいちご、ブロッコリー、そしてきのこ類や魚介類に含まれるビタミンD、お肉やお魚、大豆製品などの良質なタンパク質をバランス良く摂ることを心がけてくださいね。

飲み物も、冷たいものより温かいものを選ぶと良いでしょう。白湯やノンカフェインのハーブティー、生姜湯などで、ほっと一息つきながら体を温めるのも素敵です。

5.2.2 2. 心地よい眠りで体を休める

質の高い睡眠は、乱れがちな自律神経を整え、体の抵抗力を保つためにとても大切です。お休み前は、スマートフォンやパソコンの画面を見る時間を少し減らして、ゆったりとリラックスできる時間を作りましょう。寝室の温度や湿度を快適に保ち、自分に合った寝具を選ぶことも、心地よい眠りにつながります。ぬるめのお風呂にゆっくり浸かってからお布団に入るのも、体が温まりリラックスできておすすめです。

5.2.3 3. 無理のない範囲で体を動かす

軽い運動は、血行を良くして体を温める効果が期待できます。お天気の良い日には、近所を少しお散歩したり、お家で簡単なストレッチをしたりするのも良いですね。無理のない範囲で、気持ちよく体を動かす習慣を取り入れてみましょう。特に、日中に太陽の光を浴びながら体を動かすことは、体内時計を整えるのにも役立ちます。

ただし、運動して汗をかいた後は、体が冷えないように、すぐに汗を拭いたり、乾いた服に着替えたりすることを忘れないでくださいね。

5.2.4 4. お風呂でじんわり温まる

シャワーだけで済ませず、湯船にゆっくりと浸かることで、体の芯からじんわりと温まることができます。38度から40度くらいの、少しぬるいかなと感じるくらいのお湯に、15分から20分ほど浸かると、心身がリラックスしやすくなります。血行が良くなることで、冷えの改善や一日の疲れを癒すのにもつながりますよ。

お気に入りの香りの入浴剤を使ったり、好きな音楽を聴きながらバスタイムを楽しんだりするのも、心豊かな時間になりそうですね。

5.2.5 5. 心穏やかに過ごす工夫を

ストレスは、知らず知らずのうちに自律神経のバランスを崩し、体の不調を引き起こす原因になることもあります。好きなことに没頭する時間を持ったり、気のおけないお友達とおしゃべりを楽しんだり、ご自身に合った方法で上手に気分転換をしましょう。心地よい香りのアロマを焚いたり、ゆったりとした音楽を聴いたりするのも、心を落ち着かせるのに役立ちます。

もし、気分が晴れない日が続くようでしたら、一人で抱え込まずに、信頼できるご家族やご友人、あるいは専門家の方に相談してみるのも大切なことです。

花冷えの時期は、美しい桜を愛でる喜びがある一方で、ちょっぴり体調を崩しやすい時期でもあります。日々の小さな心がけを大切に、ご自身をいたわりながら、うららかな春を満喫してくださいね。

6. 花冷えは季語?俳句や短歌における使い方

春の訪れを告げる桜。その美しい花々が咲き誇る一方で、ふっと冬に引き戻されるような寒さを感じることがありますね。この現象を指す「花冷え」という言葉は、実は日本の豊かな言葉文化の中で、俳句や短歌といった短い詩歌の世界でも大切にされてきました。ここでは、花冷えがどのように季語として扱われ、歌に詠まれてきたのかを見ていきましょう。

6.1 「花冷え」はいつの季語?

「花冷え(はなびえ)」は、春の季語として歳時記に掲載されています。具体的には、桜の花が咲く頃、一時的に訪れる寒さを指し、季節の分類としては「晩春」にあたることが多いです。満開の桜と、肌を刺すような冷たい空気。その対比が、独特の風情を生み出しますね。

この時期の寒さは、ただ寒いというだけでなく、どこか儚さや切なさを伴うもの。だからこそ、多くの歌人や俳人の心を捉え、作品のテーマとなってきたのでしょう。

季語としての「花冷え」詳細
季節春(主に晩春)
意味桜の開花時期に、一時的に気温が下がること。寒の戻りの一種。
情景・イメージ満開の桜、冷たい風、肌寒さ、春先の不安定な気候、儚さ、風情

6.2 俳句における「花冷え」の使い方と例句

俳句の世界では、「花冷え」という言葉一つで、春の特定の情景やそこはかとない情感を表現することができます。五七五の短い言葉の中に、咲き誇る桜の美しさと、ふいに訪れる寒さ、そしてそれによって引き起こされる心の動きを凝縮させるのです。

「花冷え」を詠む際には、以下のような点に注目して情景を切り取ることが多いようです。

  • 桜の花と寒さの対比
  • 花冷えの日の人の営みや感情
  • 花冷えによって際立つ自然の様子

6.3 短歌における「花冷え」

短歌においても、「花冷え」は春の情景や心情を詠む際に用いられることがあります。五七五七七の三十一文字の中で、桜の季節の寒さがもたらす切なさや、ふとした思いなどが表現されます。

例えば、現代の短歌でも、花冷えの夜に大切な人を思う気持ちや、過ぎ去った春の日々を懐かしむ情景などが詠まれることがあります。俳句と同様に、美しい桜と寒さのコントラストを背景に、人の心の機微を描き出すのに適した言葉と言えるでしょう。

もしご自身で俳句や短歌を詠む機会があれば、この「花冷え」という言葉を使って、春のひとときを表現してみてはいかがでしょうか。きっと、奥深い言葉の世界に触れることができるはずです。

7. 花冷えの類義語や関連する春の言葉

「花冷え」という言葉は、桜の季節の寒さを美しく表現していますが、春の気候の移り変わりを表す言葉は他にもたくさんあります。ここでは、花冷えと似た意味を持つ言葉や、同じ頃に使われる春の言葉をご紹介しますね。これらの言葉を知ることで、春の情景がより豊かに感じられることでしょう。

7.1 花冷えと似た意味を持つ春の言葉(類義語)

まずは、花冷えと意味合いが近い、春先の寒さを表す言葉を見ていきましょう。それぞれ少しずつニュアンスが異なりますので、その違いを感じてみてください。

言葉読み方意味とニュアンス
春寒しゅんかん、はるさむ春になってからの寒さのこと。「花冷え」が桜の時期に限定されるのに対し、「春寒」は春全般の寒さを指すため、より広い範囲で使われます。暦の上では春でも、まだ冬のような寒さが続くときに使われることが多いですね。
余寒よかん立春を過ぎてもなお残る寒さのこと。冬の寒さがまだ去りきらずに残っている、というニュアンスが強い言葉です。「花冷え」よりも早い時期、主に2月頃から使われることが多いでしょう。
冴返るさえかえる一度暖かくなった春先に、再び寒さがぶり返すことを言います。「花冷え」と非常に近い状況で使われ、急に気温が下がって驚くような感覚を表します。春先の不安定な気候を的確に捉えた言葉ですね。
春浅しはるあさし春になったばかりで、まだ寒さが残っている様子を表します。本格的な春の暖かさにはまだ遠い、早春の気配を感じさせる言葉です。「花冷え」の時期よりは少し前の、春の訪れを感じ始めた頃の寒さに使われます。

これらの言葉を使い分けることで、春の寒さの微妙な違いを表現豊かに伝えられますね。

7.2 花冷えの時期に関連するその他の春の言葉

次に、花冷えが感じられる桜の季節や、その前後の春の天候や情景を表す言葉をご紹介します。これらの言葉は、花冷えの時期の雰囲気をより具体的に思い描く手助けとなるでしょう。

7.2.1 春の雨や風を表す言葉

春の天気は移ろいやすいもの。そんな春の雨や風にも、美しい名前がつけられています。

  • 菜種梅雨(なたねづゆ):3月下旬から4月上旬頃、ちょうど菜の花が咲く時期に降り続く長雨のことです。しとしとと降る雨が、桜の開花を促す一方で、時には花冷えの原因となることもありますね。
  • 春時雨(はるしぐれ):春に降ったり止んだりする、通り雨のような雨を指します。ぱらぱらと降ってはすぐに日が差すような、気まぐれな春の空模様を表しています。
  • 桜流し(さくらながし):桜の花が満開の頃や散り際に降る雨で、桜の花びらを散らしてしまう様子からこう呼ばれます。少し寂しい響きもありますが、美しい情景が目に浮かびます。
  • 春疾風(はるはやて、しゅんしっぷう):春に吹く強い風のことです。「春一番」も有名ですが、春疾風はそれ以降にも吹くことのある、やや突発的で激しい風を指します。暖かさを運んでくる一方で、時には花を散らしてしまうこともあります。

7.2.2 春の空模様や光を表す言葉

花冷えの時期の空は、晴れ渡る日ばかりではありません。そんな空模様にも趣深い言葉があります。

  • 花曇り(はなぐもり):桜が咲く頃の、空一面が薄く曇っている様子を言います。満開の桜を背景にした柔らかな曇り空は、独特の風情がありますね。この花曇りの日が、意外と花冷えになったりもします。
  • 春霞(はるがすみ):春の日に、遠くの景色がぼんやりと霞んで見える現象です。空気中の水蒸気やちりなどによって起こり、穏やかで幻想的な春の情景を作り出します。
  • 朧月夜(おぼろづきよ):春の夜、霞や薄雲にかかって、月が柔らかくぼんやりと見える様子です。直接的な寒さを表す言葉ではありませんが、花冷えの夜にふと空を見上げると、こんな月に出会えるかもしれません。

これらの言葉を知っていると、日々の天気や季節の移ろいに対する感性が豊かになり、暮らしの中に小さな楽しみを見つけやすくなるのではないでしょうか。花冷えの時期だけでなく、春の様々な表情を感じてみてくださいね。

8. まとめ

「花冷え」とは、桜が咲き誇る頃にふと訪れる、春先の寒の戻りのこと。美しい響きを持つ言葉ですが、この時期は日中と朝晩の気温差が大きくなりがちです。そのため、お花見などでお出かけの際は、羽織るものを用意するなど服装で上手に調節し、体調を崩さないよう心がけたいですね。時候の挨拶や会話で「花冷え」という言葉を使う際は、相手の健康を気遣う一言を添えると、より心温まるコミュニケーションになるでしょう。この記事が、花冷えの時期を健やかに、そして言葉豊かに過ごすための一助となれば幸いです。

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この記事を書いた人

ハレノヒ編集部は、「わたしらしく、身軽に暮らす」をテーマに、日々の暮らしを前向きに楽しむためのヒントをお届けしています。
美容や健康、趣味、暮らしの工夫など、50代以降の女性を中心に、誰もが自分らしく輝けるような情報をやさしい目線で発信しています。
ちょっと気になる話題や、ふと心に残る言葉も添えて、皆さまの毎日が少し晴れやかになりますように。

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